BOB

紅夢のBOBのレビュー・感想・評価

紅夢(1991年製作の映画)
4.0
蘇童の小説『妻妾成群』を原作とする、チャン・イーモウ監督&コン・リー・コンビの第4作。

1920年代、封建制度下の中国。大地主の家に第4婦人として嫁いだ19歳の少女・頌蓮が、既存の妾妻たちと鎬を削る。

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圧巻の完成度を誇る傑作。

中国版『大奥』のような、御主人様の寵愛を巡る女性達の熾烈な愛憎劇。女性達と策略・報復合戦を繰り返しながら、御主人様が逢いに来てくれるのをただただ待つ。そんな生き地獄のようなお屋敷生活に耐え兼ねた頌蓮は、次第に正気を失っていく。

素晴らしい撮影。お屋敷生活の閉鎖性を視覚的に語る、美しく興味深いショットの目白押し。その中で個人的に一番心に残ったのは、コン・リーの顔を固定アングルで真正面から撮り続けるオープニングショット。虚ろな眼差しではらはらと涙を流しながら、側室になることが女性の宿命であると、自分に言い聞かせるように呟く。円環構造のようなラストを見ると、このオープニングショットの重みは何倍にも増してくる。

主役級の存在感を放つ大邸宅の建築美。初めは感動するほどに荘厳華麗な大邸宅に見えていたが、話が進むにつれて、女性たちを幽閉する堅牢な牢獄🔒に見えてきた。モンタージュの連続によって演出される幽玄なラストシーンは完璧だった。痺れた。

紅の鮮烈。本作のトレードマークである紅い提灯は、愛や性の象徴として描かれていた。"古き良き中国"の象徴であると同時に、性奴隷のように女性を束縛してきた"負の歴史"の象徴としても機能しているのが巧い。

先祖代々続く屋敷の"しきたり"。紅い提灯が灯された部屋の女性は、使用人からフットマッサージを受け、主人と夜を共にすることができる。「フットマッサージは権力の象徴」という言葉が印象深い。

屋敷の主人は雲の上の存在ということか、その顔は一度もはっきりとは映されない。主人の寵愛を争うライバルは、4人の正式な婦人だけではない。三女はまさに籠の中の歌鳥。

63
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