つのつの

ハッスル&フロウのつのつののレビュー・感想・評価

ハッスル&フロウ(2005年製作の映画)
3.7
言わばヒップホップ版シングストリート。しかもこっちは学生ではなく中年のオッサン。
売春の元締め(ピンプ)が職で生活はドラッグとタバコと酒にまみれてる。
そんな主人公とその仲間が、このどん底でクズな社会の底辺から見つけ出した些細な希望の光はかつて抱いていた「夢」であった「ヒップホップ」。

音楽映画でこれ出来てなかったらもうどうしようもないけど、例にも漏れず本作もそもそも劇中で作られていく音楽、そしてそれが醸し出すグルーヴ感が素晴らしい!
特に一曲目の「Whoop That Trick」の製作過程は本当に最高。
ビートを刻むごとに段々音が増えていき、それにラップを乗せて、フックを叫んでそれを聞いた周囲の人間が集まって、、この高揚感は是非味わっていただきたい!

だからこそ、主人公たちの事が愛おしくなり、ついにスキニーのパーティーに参加する直前のシーンは、頼むから成功してくれ!と願わずにはいられませんでした(ここで、Dジェイが一旦家に戻ってから取る行動もまた泣かせる)。
その後のパーティーシーンでも、ダメかと思ったら良い感じになってなのに〜〜みたいな展開もまたニクい。

ライムスター宇多丸氏の言葉を借りるなら本作は「夢の呪い的側面を描いた」作品です。
主人公が結果的にああなってしまうのは、自分がずっと持ち続けて後戻りできなくなる所まで行ってしまった「夢」が目の前で木っ端微塵に破壊されてしまったことによる突発的な行動なわけです。
だから、ラストも決して単純なハッピーではないのかもしれません。その後、彼らは再び「夢」によって重大な過ちを犯してしまうかもしれない。
そもそも、あんな生活してた上にさらにああいうことにまでなってしまったらとてもじゃないけど彼が望んでいた夢の成就は不可能なのが、現実ではないのでしょうか。

それでも!!そんなクズみたいな俺たちがこの世界に唯一小さく弱いけれども確実に残した爪痕。
これもまた「夢」を持つことでしかできなかったなのです。

SRサイタマノラッパーシリーズを思い出したりもしました。
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