Uえい

美しき諍い女(いさかいめ)のUえいのレビュー・感想・評価

4.0
上映時間が4時間近くありずっと敬遠してきた本作をようやく見た。ある画家が"美しき諍い女"という絵画を完成させるまでの過程を追った映画で、演劇など芸術を完成させる過程を描くリヴェットの十八番のテーマが描かれた傑作だった。

冒頭からものすごいシーンだった。若い画家のニコラと小説を書く彼女のマリアンヌは、田舎に来ていた。ホテルの中庭でニコラが他の観光客をスケッチしていると、マリアンヌがそれを写真に撮る。そして、観光客を騙すかのように喧嘩を演じ始めるのだ。撮影による上下の空間の使い方と見られるという関係を多重に描くのが凄すぎてちょっと疲れるくらい驚いた。

そしてニコラとマリアンヌは画商の案内で古城に住むベテラン画家フレンホーフェルに会う。フレンホーフェルは"美しき諍い女"という絵画を完成させられず10年も経っていたが、マリアンヌをモデルに描き始めるモチベーションが湧いてきたのだった。

そこから二人はアトリエに籠り簡単なデッサンから書き始めるのだが、初めはフレンホーフェルがマリアンヌを人形の様に扱うが、だんだん立場が逆転してくる。そんな中ひたすら描き続けるのは、ベンヤミンのいうアウラが生成される過程を見ているかの様だった。彼氏のニコラがモデルを直接見ずに写真を見て書くというのも示唆的だった。

そして、マリアンヌ以外から死を感じるのも印象的だった。フレンホーフェルは老いやスランプによって。妻は元々モデルだったが今は剥製を作っていて死を意識する。ニコラはマリアンヌが二人でいることによる浮気・破局を恐れる。そんな感情が最後の絵画のお披露目によって着陸するが。真実は秘密によって隠されていて、永遠に終わる事がないという、ある意味で死を克服したかの様なエンディングになっているのも後を引く。
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