Jeffrey

竜馬暗殺のJeffreyのレビュー・感想・評価

竜馬暗殺(1974年製作の映画)
4.5
「竜馬暗殺」‬
‪冒頭、松村禎三の音楽と共にキャスト紹介。慶応三年十一月十三日。氷雨、刀を貰い竜馬の引越し、二名殺しで指名手配中。覗き、瓦の屋根、ど近眼、鉄砲、性行為、侍の内ゲバ、革靴…本作は黒木和雄がATGで撮った大傑作で大好きな一本。坂本龍馬が暗殺される迄の三日間を描いた時代劇で主‬演の原田芳雄を初めてスクリーンで見て知った私的思い出深い作品だ。この映画はまぁ奇怪な風景で化粧するわ男同士抱き寝するわ突如チャンバラが始まるわ自分の知る常識が此処には無い…そして十六ミリモノクロ映像が何ともスマートかつスタイリッシュで松村の音楽が雰囲気を醸し出し最高に格好良い。も‬う原田こと竜馬が渋く、短気で威丈高で太い声、口調で話すのが個人的にはツボで最高。“ええじゃないか”と口に乱舞し人混みに紛れる竜馬の和装にブーツと言うナンセンスな組合せが何とも言えない…そして本作の最大の見所の一つの結末は題名の如く竜馬が暗殺されるシーンが呆気なくと言うか幕末の闇を生き抜いた男‬の死に様がこうもユニークに終わるとは…物語は革新的な思想を持つ竜馬を危険と思う佐幕派と倒幕派に命を狙われ身を隠す。常に刺客に注意し、仲間を連れ生活する。激動の幕末を描く。画期的な事は人気度が高い大河ドラマにも竜馬がゆくがあるが、それとは異なり彼の死ぬ前の三日間にフォーカスした所や‬実は暗殺任務の遂行を任された身内や薩摩藩士の手下でまた別の仲間にも抹殺を遂行しようとする者や実姉とやっちまう弟こと右太演じる松田優作の滑稽な心情、葛藤が面白いしやはり“突如”が多い作風は観ていて楽しい。脳天ぶった斬り、血が流れる畳部屋を頭上から撮影する終盤、祭りの渦中に消える幡(竜‬馬と関係を持つ右太の姉)の描写等、見応えがある。当時の政治背景や六〇年代からの新左翼所謂青年労働者、学生の革命志向へと繋がる物がある。それから主なキャスト選抜は原田が行ったと言うのも凄く意欲的だなと…新鮮な映像が流れまくり、空を見上げる民のシークエンスが最後まで気になる…傑作だ。‬黒木和雄がATGに遺した幕末を舞台に全く新しい視点で竜馬を描いた本作はATGの中でも最高の部類に入る。原田芳雄演じる竜馬のインパクトが凄いこと…松田優作のコミカルな芝居に松村禎三の音楽…16ミリモノクロの世界と竜馬暗殺のオチが余りにもシュールかつ芸術的な空間美が最高に好き!
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