Ayako

雨よりせつなくのAyakoのネタバレレビュー・内容・結末

雨よりせつなく(2004年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

淡々としたトーンで、見ている間じゅうずっと、セリフやシーンの”行間”を考えさせられる作品でした。セリフといっても、はっきりと物語の方向性を示すようなものは少なく、解釈の仕方も見る人や見た時の気持ちに左右されるので、好き嫌いは分かれるとおもいます。

私、個人としては、『カンバセーションズ』や『ビフォア・サンセット』をやや彷彿とさせてくれる、好みの作品でした。(あと、最後にえいやで、主演の二人を無理に復縁させてハッピーエンドにしない展開も、私が気に入った理由の一つです。)恋愛におけるすれ違いや、日常の中での心の浮き沈みを部屋のインテリアや服装含め、映像全体で描いていて、登場人物の綾美や倉沢に寄り添って見ることができました。主人公に語らせず、言葉にでてこない行動や、部屋の様子に語らせるシーンが、特に多い印象を受けました。

例えば、倉沢が亡くなってしまった彼女の月命日に、決まって白いお花を買うシーン。まず、花屋で、毎月記念日に花を買っていく常連の男性客という認識の店主にぎこちない様子の倉沢の様子で、何かお祝いするためのものではないことがわかる。そして、花が落ち始めていようが、若干朽ち始めていようが、そのまま飾られている様子を見せることで、倉沢が大事にしている過去とつながりがあるということを匂わせる。最後に大きな花束にして買ったのは、亡き彼女と共に生きてきた10年間に区切りをつけて、綾美と新たな幸せを築いていこうという彼なりの決意表明だったのかなと。残念ながら綾美の解釈は恐らく彼の意図したものとは違い、別れにつながるのだと思うけれど。

もどかしいような、清々しいような矛盾した気分を同時に味わえる不思議な作品でした。
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