まいこ

エレファントのまいこのレビュー・感想・評価

エレファント(2003年製作の映画)
3.5
全米を震撼させたコロラド州コロンバイン高校の銃乱射事件に衝撃を受けた、『誘う女』のガス・ヴァン・サント監督入魂の問題作。
彼は世界に向けて「なぜ?」と問い続ける。素人の高校生の実体験から真実の言葉を引き出した本作は、2003年のカンヌ国際映画祭で史上初のパルム・ドールと監督賞のW受賞という快挙を果たした。“あの事件”の脆くて傷つきやすい少年達の日常がリアルで切ない。プロの役者は3人の大人だけ、生徒はすべて実際の高校生3000人からオーディションで選ばれ、台詞はアドリブ。

オレゴン州ポートランド郊外のワット高校。ある初秋の朝、生徒たちそれぞれの、いつもの一日が始まる。ジョンは、酒に酔った父と車の運転を交代して学校に到着。だが、遅刻した彼は校長から居残りを言い渡される。写真好きのイーライはポートレート制作の真っ最中。

キスも知らない17歳が銃の撃ち方は知っている
何の変哲もないただの日常を送っているコロンバイン高校の生徒が、ある瞬間を境に銃乱射事件へ巻き込まれる。

非日常は突然やってくる。臨場感と絶望がダイレクトに伝わるカメラワークと対照的な生活音。
目を引くジャケ画の黄色背景金髪くんが更生する話なのかと勝手に勘違い。"群盲象を模す"を胸に刻み、wikiでの情報を頭に詰め込むことがせめてもの祈りかもしれない。一般知識として観ておくべき作品。

५✍( '▿' )メモ
“Elephant in the room”という慣用句に基づいたもので、これは誰の目にも明らかな大きな問題があるにもかかわらず、それについて誰も語ろうとせずに避けて日常を過ごすとの表現からの引用である。
「群盲象を評す」ということわざもあり、これは複数の盲人が一頭の象を触ってみて、象とは如何なる動物かと語ってみた逸話に基づいている。同じ象であっても、足を触った盲人は「木である」と言い、鼻を触れた盲人は「蛇である」と言った。「論ずる対象が同じであっても、その印象も評価も人それぞれに異なる」という意味であり、また「わずか一部分を取り上げたところで、その事象の全てがわかるわけではない」という意味でもあり、「群盲象を模す」「群盲象を撫づ」ともいう。
カンヌ国際映画祭の会見においてヴァン・サントは、アメリカ共和党の銃規制の方針などと、その党シンボルである象を掛け合わせて、スタッフが題名を考えていたとの逸話も語った。
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