三樹夫

果しなき欲望の三樹夫のレビュー・感想・評価

果しなき欲望(1958年製作の映画)
3.7
監督今村昌平、主演長門裕之、制作会社日活のケイパー、スクリューボール・コメディ、スリラーと色々なものを詰め込んだエンタメ作品。

防空壕に埋めたモルヒネを取り出そうと5人の男女が集まった。あれ本当は4人になるはずなのに1人多い。しかもモルヒネを埋めた防空壕の場所は今や肉屋になっていた。近くに空き家を借り不動産に偽装して、地下から穴を掘っていきモルヒネを取り出そうとする。
大家に不動産屋を開くと偽って空き家を借りようとするが、大家がクソジジイで金を吹っかけてくる。大家が出してきた条件が金をまけてやる代わりに無職の息子長門裕之を社員として雇えと言ってきた。渋々条件をのみ、人の目を盗んでひたすら穴を掘っていくが金の魔力は人を変え、いかに他人を蹴落とすかと最後はスリラーになるというもの。

色々な要素が入っている映画だが、この映画を一番占めているのはスクリューボール・コメディとなっている。邦画でスクリューボール・コメディをやるには日本語がウェットな会話のやり取りには向かず、洋画の真似をそのまましてもスクリューボール・コメディにならないという障壁がある。市川崑は邦画でスクリューボール・コメディをやるにあたっては画作りと編集によってアプローチを行っていた。イマショーは市川崑とはアプローチを変え、この映画では大阪弁にすることによって会話のやり取りで笑わせようとしている。とにかく役者の会話がポンポン進んでいき、それでテンポを作り、会話で笑わせようとしている。大家が「人の上に立つ者は下の者を~」みたいなことを言っているシーンで、床下に隠れている西村晃と小沢昭一が映しだされるなど、手の込んだこともやっている。
ケイパーものとしては後半までは穴を掘っている描写がほぼない。映画内全体でケイパー描写の割合は少なめになっている。一応は穴を掘ることの基本を押さえているが、わりかしあっさりと穴が掘れており、そこまでケイパーには注力していない印象を受ける。

西村晃と加藤武は声が全然変わっていなくて、見た目は正直誰やこれとなるが声聞いたら誰か分かった。長門裕之の役はボンクラ息子で途中ほぼ姿を消すと主演だが存在感薄め。どういう風に穴掘りの5人と絡ませるんだろと思っていたら、あまり絡ませないというやり方をしており、そこまで興味がなかったんだなと思った。この映画で一番輝いていたのは渡辺美佐子で、凄い魅力的なキャラとなっている。
三樹夫

三樹夫