キューブ

サマーウォーズのキューブのネタバレレビュー・内容・結末

サマーウォーズ(2009年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

 序盤の展開はなかなか良くできている。高校生のラブコメ的ストーリーに、ハイテクな仮想世界を舞台とするSFをうまく絡ませられている。実際テンポも良く、夏希の親戚たちを順番に見せていく場面もくどくなり過ぎず、上手に紹介できていた。

 だがその後は問題だらけだ。まずエンターテインメント作品としてはあまりにも敵キャラクターの印象が薄い。没個性的でその造形も恐怖を感じさせるものではない。むしろ変身前の、どこぞのネズミにそっくりな姿の方がよっぽど不気味だった。

 その次に夏希のキャラクターの弱さ。印象に残っているのが序盤だけで、あとは彼女の人物像をまったく思い出すことができないほどである。なぜ主人公を真の意味で頼りにし始めるのか、どうして侘助に惹かれていたのか、なぜ彼女が一家の中心みたいな扱いをされているのか。どれもこれもまったく語られることはない。それなのに最後のおいしいところだけ持っていくのは筋が通らない。大体、あれほどメタファーのように扱われる花札も、なぜあれほどまで思い入れのあるものなのか分からないのだ。

 そしてこの映画のテーマにも関わることだが、「家族の絆」の描き方があまりに陳腐だと感じた。なぜあの家族のあり方を正しいものとして描きたがるのか。もちろん今の現代社会ではなかなか見られない家族のあり方ではあると思う。だが、それにも問題点があることを一切提起せず、「家族って温かい」などという使い古されたネタを振りかざす理由がわからないのだ。
 途中、侘助という(夏希から見て)曽祖父の妾の子が登場するが、彼の存在を軽んじている点もマイナスである。自分の特異な出自から、ややニヒルな性格となっている彼に対し、攻撃的な態度をとる親族たち。ある意味、この点はリアルとも言えるが、問題はその後だ。なんと侘助が「母親(夏希の曾祖母)の死」を前にすると、なんの葛藤もなく、気づけば親族たちに協力しているのだ。彼にとって、どれほど母親の存在が大きかったのか。その表面をサラッと撫でただけで、彼の行動の根拠になると思ったら大間違いだ。それを「みんな仲良しに戻ったから解決」などと言われたら、誰もが呆れかえるだろう。

 ハイテクなものを「古き良き伝統」に織り交ぜるのもいいアイデアだったかもしれない。だが、ただ単にセンスのあるようなアニメを作りたかったようにも受け取れる。新機軸を打ち立てたように見せながら、干からびた考えに固執している今一歩な作品となってしまった。
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