映画猫

ミリオンダラー・ベイビーの映画猫のレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
2.8
私はイーストウッド監督のシンプルで分かりやすいストーリーラインが好きで、お気に入りの作品もあるのだけど、今回のは気持ち悪いと感じてしまいました。

というのも、マギーがあまりにも幼く弱い存在として描かれていたからです。肉体的にはボクシングの才能に恵まれたタフな選手だったかもしれないけど、自分を愛する気の無い母親にすがりつくため自分の将来(に必要なお金)すら売り渡し、見舞いに来ない家族をいつまでも窓辺で待つなんて、精神年齢は子どものままと言っていい人です。もちろん、そういう女性はいます。社会的な弱者の悲哀を描くのならそれもいいでしょう。でも、これは愛の物語なんです。性愛ではないけれど、イーストウッド扮する年老いた男性が一人の女性を見つめる話です。それなのに!マギーはろくでなし家族への精神的な隷属がやめられないままここが限界だと決め、男もそれを認めるかのように手助けしちゃうんですよ!いやいやいや、「そんな家族は捨ててしまえ!」くらい言えないの?!もし、男がマギーを本当に強い女性だと信じていたのなら、彼女が弱音を吐こうとお前はまだ本当の自分の強さを知らないのだと鼓舞できたのではないかと私には思えます。でも、それをしなかったのは、最初から最後まで男の目にはマギーが幼い少女のままに映っていたからではないでしょうか?この娘には超えられない。ここが限界だと。
ここでイーストウッド監督自身の作品観になりますが、老齢の、酸いも甘いも噛み分けた人生経験も観察眼も肥えたはずの人間が満を持して繰り出した女性像がこれなのか…というところに私は一人の女性として気持ち悪さを感じざるをえなかったというのが結論です。
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