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ミリオンダラー・ベイビーのおーつのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
4.5
アカデミー作品賞でボクシングと言えば『ロッキー』が頭に浮かびますが、同じボクシングで作品賞の『ミリオンダラーベイビー』を『ロッキー』と同じテンションで鑑賞すると強烈なボディブローをくらうことになります。そもそも監督イーストウッド、脚本ポールハギスの時点で『ロッキー』路線に行くわけがないですよね。笑

正直、前半は女性版『ロッキー』なんです。
白人最下層のアイルランド系の女性がどん底から抜け出そうと、イーストウッドと組んでのし上がっていくという点が類似しています。

そこから映画の後半、悲劇が起こります。
私はTVの液晶と70センチくらいの距離まで顔を近づけて「え!?」と声を漏らしてしまいました。

ラストの展開に関して、
私は一つの宗教を支持していないので信仰的な理由で賛否はしません。
だがしかしそんな自分だからこそ、ラストの「人間の尊厳」という難解な倫理的な問題について明確な立場を表明することができないでいます。

私がこの映画を観て出した結論は、
生きる者全てが「人生の"量"と"質"」について考えるが、
他人の人生の量と質に関しては口を出すべきじゃない。
どのような答えであれ自分で見出した答えなら、例え他者が理解に苦しんだとしても、理解せざるを得ない。

「人それぞれ」といってしまえばそれまでかもしれませんが、そんな簡単に言い表したくないです。

この映画内の結論に至るまでに前半からイーストウッドとヒラリースワンクの生涯と、とりまく人物の生涯と人間観がしっかりと描いているため、それらが与えた影響にも説得力があってよくできていました。

かなり好み分かれるかもしれませんが、私は傑作だと思いました。
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