この映画がハッピーエンドでないからこそ生まれる問いがあると思う。
『あの選択は正しかったのか?』
教会に通い続け、娘に届かない手紙を書き続ける主人公は、きっと過去に親として後悔した選択をしたということが伝わってくる。
では、ボクシングではどうだろう。過去に主人公のトレーニングを受け、タイトルをとる直前にある意味では主人公の選択のせいで失明をした元ボクサーの存在が象徴的だ。成功もあれば失敗もあった。しかし、成功のほうにすがっているように見える。
そこに出てくるのが、娘と同じ年代のボクサー志望の女子。自分のトレーナーとしてのやり方をしたい、そのトレーニングのもと成果を出していく。ボクサーとしての成功を掴む過程で、観客から愛という意味のリングネーム『モクシュラ』という声援を増やしていく。そのリングネームを主人公がつけているあたりが、ボクサーへのトレーニングを通じて実の娘への償いをしていることを象徴している。
しかし、その最後は決してハッピーとはいえない。『同じ過ちを繰り返した』と見ることもできるだろう。
結局、人は過去から何も学ばないのかもしれないと思えるが、その方が人間くさくてリアルな気がする。