オーウェン

インテリアのオーウェンのレビュー・感想・評価

インテリア(1978年製作の映画)
4.3
才能のある姉と才能のない妹。完璧を求める母と、安らぎを求める父。
認められた妻と、認められない夫。

そこには様々な対立、複雑な人間関係がある。
そして、扱われているテーマは、死であり、美であり、才能であり、愛だ。

映画「アニー・ホール」を観た時、ウディ・アレンのセリフ「僕は、他の人達が苦しんでいるとき、一人だけ楽しむことはできないんだ-----」が、私の胸を刺した。

きっと、この人は、”真実の眼”を持っているに違いない-----その勘は当たっていた。
このウディ・アレン監督の映画「インテリア」において、彼の洞察力の鋭さ、真実を追い求める姿勢が、充分にうかがえる。

「一人のモーツァルトの影に百人のモーツァルトがいる」という言葉があるが、一人の才能のある、秀でた人間の側には、そのために苦しんだり、焦ったり、悩んだりする平凡な人間がたくさんいるのだ。

また、秀でた人間の側にも、真に理解してもらえないという、孤独感、苦しみがあるだろう。
しかし、いずれにしろ、人間というものは、たった一人で死んでいく運命にある。

そのとき、才能があるかないか、美しいか美しくないかなどということは、全く関係ないことだ。

あまりにも、近代的な自我が発達し、才能ある者への希求が強い現代において、もっとも単純で基本的なこのことが、案外、忘れられているのではないだろうか?

ウディ・アレンが、例の語り口で、「結局、死ぬときは皆一緒さ-----」と言っているのが、聞こえてきそうな気がします。
オーウェン

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