わたし

あなただけ今晩はのわたしのレビュー・感想・評価

あなただけ今晩は(1963年製作の映画)
4.4

「アパートの鍵貸します」のキャスト・スタッフが再集結、ということで大いに期待して見てみたら、期待通りに大好きな作品でした。
「アパート…」よりももっと突き抜けてコミカルな痛快コメディ。
ドタバタ劇、というよりドッタンバッタンという感じ。

冒頭、娼婦のイルマが売春で稼いだお金をすべてボーイフレンド(日本語字幕ではヒモと表現)に取り上げられ、しかも「もっと稼いで来い!休んでないで働け!」と暴力をふるわれる。

当の暴力男は酒場で同じヒモ仲間と、飲みながらゲームをするだけの毎日。
なんで女の子たちはこんな扱いを受けて文句言わないんだ!?弱みでも握られてるのか?と思った。

でも…警官をクビになったネクターが暴力男からイルマを助けたことで、二人が恋人同士になった際「新しい仕事は市場で見つける。君だけ働かせるなんて出来ない。」と言うネクターに、イルマはそんなことしないで、と泣きながら懇願する。

「男を養うことも出来ない安っぽい女だってみんなに笑われるわ。」
「あなたには格好良い服を着てパリッとしていてほしいのよ」
そういう考え方だったんだ!と衝撃。暴力を振るわれるのは別問題だけど、貢ぐこと自体は嫌々やらされているわけではない。彼女たちの世界では、男に金を与えてより贅沢させることが、ある意味自分自身のステータスなのだ。

売春で男性たちに優しくするけれど、仕事は仕事。イルマが愛しているのはネクターで、ネクターに惜しげもなく愛を与えるイルマの様子がとっても可愛らしい。(性悪で嫌味な女…になっても仕方ないような役柄だけど、シャーリーマクレーン演じるイルマは素直でピュアでチャーミング、すごく魅力的。)

でもネクターは愛する女性が他の男と仲良く過ごしていることに嫉妬し、どうしても割り切れず、とんでもないアイディアを思いつく…
不器用で実直で、思い立ったらその通り行動するため一直線なおバカなネクターがもどかしく、苦しく、呆れてしまうけど、酒場の主人(この人もすごく良いキャラクター)が放っておけず手助けしてしまうのも分かる。

ネクターを演じたジャックレモンの表情の演技、わざとらしいのにどうしても笑ってしまう!特に疲れてるとかやつれてる系、今作で言うと、夜中ぶっ通しで市場で肉体労働してるシーンや刑務所で謎の運動をさせられているシーンでの顔。お気に入りです。

ありえないことばかりだけど、全部コメディだから!と笑ってしまえる。
約140分と長めだけど、飽きずに見られる楽しい映画。
わたし

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