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グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちのjunのレビュー・感想・評価

4.1
アカデミー脚本賞受賞作。
脚本を手掛けたのは当時は無名だったマット・デイモンとベン・アフレック。

あらすじ→
幼少期に義父から受けた虐待により心に深い傷を負ったウィル(マット・デイモン)は周りに心を閉ざしたまま成長し素行が悪く暴力を振るっては度々問題になっていた。
昼はマサチューセッツ工科大学で清掃のアルバイト、夜は仲間とクラブで呑み明かすような日々だった。

ある日一人の数学教授が廊下にある黒板を利用し生徒たちへ数式の課題を出題。数学教授でも解くのに2年かかったという超難問だった。
しかしある時それがすんなりと解かれている事に気付く。
誰が解いたのかと生徒たちに尋ねたが申し出るものはいなかった。
教授は更に難問を投げかける。
するとある日黒板に書き込みをする一人の青年を目撃する。清掃バイトのウィルだった。教授はウィルに「落書きをするな!」と怒鳴りますがよくよく見てみるとなんと正解が書き込まれており…
実はウィルは人並外れた暗記力の持ち主であり数学の天才でした。


天性の数学の才能がありながらまったくそれを活かそうとしないウィル。彼の埋もれた才能を開花させるべく数学の教授ランボーはカウンセリングを受けさせる。けれどウィルは小馬鹿にしたような態度で一向に取り合わない。
そんな時出会ったのがウィルと同じような境遇で育ち、愛する妻に先立たれ同じように心に傷を負ったセラピストのショーン(ロビン・ウィリアムズ)だった。今までのカウンセラーとは違いショーンはウィルと同じ目線で話をし、また自分自身のことも何一つ偽る事なくさらけ出しウィルと真摯に向き合います。

そんなショーンの姿に徐々にウィルの考えも変わり始め…



《以下ネタバレ少しあり》








とても心に沁みる映画でした。
初めは他のカウンセラーと同じように小馬鹿にした態度をとっていたウィルが次第にショーンに対し心を開いていく様がとても丁寧に描かれていたのが印象的でした。
ショーンは真正面からウィルと向き合い、彼が長年胸に秘めた痛みを理解し寄り添ってくれた。そして心にぶら下がった重しをそっと外してくれた唯一の信頼できる大人でした。ショーンの言葉は突き放しているようでどこか愛を感じ、本気で自分のことを想っての言葉だと分かるから身に沁みるのだと思います。

ショーンが何度も何度も《君は悪くない》と諭す様に言ったのはウィルの中で無意識に自分が実の親にも里親にさえも愛されなかったのは自分が悪いからなんだと苦しんでいるのが分かったからでしょうね。
そのたった一言でウィルは溢れ出る感情を抑えきれず子供に戻った様にわんわん泣き叫びました。自分自身と向き合う事でようやく呪縛から解放されて前を向いて生きていくことができるようになった重要な場面。こちらも涙腺崩壊です。

本当に人との出会いって大切だなぁと感じました。

誰とどのタイミングで出会うかで人生が大きく変わる。もっと言えばいつからでも人生はやり直しがきくという大切なメッセージを投げかけられた気がしました。

ショーンを演じたロビン・ウィリアムズの演技が素晴らしく、素朴で愛に溢れた理想の大人の姿がそこにありました。
ウィルの才能を活かすべく早く最先端企業で働かせたい教授のランボーに対しウィルがそれを望んでいるかが1番大事だと話すショーン。
子育てのお手本を見ているようでした。

また映画内で描かれる男同士の粋な友情にも痺れます。元々親友同士だというマット・デイモンとベン・アフレックだからこその自然な空気感もとても良かった。

映画内で1番好きな言葉は
「お前は宝くじの一等を持っているのにそれを金に換える勇気がない。それはただの腑抜けだ。二十年後も俺たちと一緒にいたらお前を本気でぶっ殺す」
という乱暴ながらもそこには愛しかないセリフ。

ラストの幕引きも素敵でした。
別れの言葉はいらないのですね。

そして初めて心底愛し、自分をありのまま愛してくれた恋人の存在もまたウィルの人生を大きく変えたひとつだろうと思います。

心が疲れた時きっとまた観たくなる映画だと思います。
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