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シェルブールの雨傘のnoelのレビュー・感想・評価

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)
4.8
一番好きなのは「ロシュフォールの恋人たち」だけど、ここにもドゥミ監督とルグランの才能とセンスが詰まってて、大好き。
若い頃に初めて見た時は途中で退屈になり、ラストの再会シーンしか印象に残らなかったけど、改めて見ると細部までのこだわりにため息が出るばかり。

その色彩センスはどのカットを見ても考え抜かれているのがわかるし、初見だと「すべての台詞にメロディがついた」事に驚くので精一杯だった音楽も、聴けば聴くほどに惚れ惚れします。
オペラの帰りのギイとジュヌヴィエーヴの二人が波止場で「子供が欲しいね」と将来の夢を語る曲のメロディと歌詞と楽器と歌声の甘美なこと。

多幸感に溢れかえってるロシュフォールとは真逆の切なさに溢れています。

ストーリーは単純ではあるけれど、それゆえにリアルであり、それゆえに深い。
ギイをカトリーヌ・ドヌーヴに釣り合う美男子ではなく、庶民的なハンサムさんにしたのもドゥミ監督の狙いのような気がします。

マドレーヌに対してギイに一度もジュテームを言わせないままにラストの再会シーンへ持っていき物語を終わらせるところも巧い。
普通の会話劇だったらそんなに引っかからないのかもしれないけれど、悲恋の二人がジュテームジュテーム歌い合っていたからこそ余計に効果的。
そこを、やっぱりギイが心から愛していたのはジュヌヴィエーヴだったんだと取るのか、若い頃の情熱より大事なものを彼は掴んだんだと取るのか。
息子にフランソワと名付けたのを未練と取るのもアリだけど、元カノが浮かれて提案した名前を敢えてつけることで、小さな復讐をしたともとれるし、ギイはとっくに古い恋を乗り越えたからこそ何のこだわりもなくフランソワという名をつけられたとも取れる。
見れば見るほど色々と考え抜かれたと思える作品です。
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