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ノルウェイの森のmogのレビュー・感想・評価

ノルウェイの森(2010年製作の映画)
3.4
映画化としてはよく出来てる。役者も監督もよく原作に向き合ってるのがわかる。菊地凛子の役づくりはすごいと思う。

でも1番ミスマッチを感じたのも菊地凛子だった。もうこれは原作読者のイメージだからどうしようもないね。もっと線が細いんだよなあ。れいこさんもなあ。霧島れいかだと綺麗すぎるなあ。みどりはイメージとは違ったけどいい感じ。ワタナベクンも。いや演技はみんないいんだけどね。イメージと合うかどうかっていう話で。

自分が脚本書くならどのエピソードを入れるか。寮の描写、ナメクジ飲む話、突撃隊、ホールデンとギャツビー、春の熊くらい、この男なりの地獄、転居先の猫、火事、蛍、それから井戸。

ギャツビーはなかったけど永沢さんに時の洗礼を受けてないものを読むなっていわれてから岩波読むようになってるところとかはあったね。

まあ原作通りやればよくなるってもんでもないし詰め込み過ぎると失敗するんだろうから、寮関係の描写とかは熟考の上、泣く泣く削ってるんだろうけど。それでも火事と蛍は緑と直子の対比として必要な気がするけどな。

あと井戸。生と死は隣り合ってるっていうこの作品のメインモチーフの象徴で最序盤に言及される草原の井戸が出てこなくて、これを言わないと、中盤ずっと出てくる緑の草原が観てる人間に茫漠とした不安を与えられないんじゃないのかなあと思って観てた。でもこれもきっと計算通りなんだろうね。最後の海岸の岩に寝そべってるシーンの水が代用なんだろうね。翻訳論の中にコンスティチューションっていうのがあって原文の要素や含みをうまく訳しきれないときに他の場所で補うってやつだけどそれに近い手法なのかなと。これはまあ成功してると言えばしてる気がする。

酷評されるほど悪くないよなあ。音楽もいいし役者もみんな頑張ってるだけに直子のキャスティングだけが悔やまれるかなあ。
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