あんじょーら

ノルウェイの森のあんじょーらのレビュー・感想・評価

ノルウェイの森(2010年製作の映画)
3.2
村上 春樹原作の映画化作品、いろいろ思うところあり未見だったのですが、なんでか今頃ふと見てみるきっかけがあり、見る事にしました。あらすじどころか原作を何度か読んでいるので非常に映像化に高いハードルを勝手に設けている次第でしたので。



1969年、ワタナベ(松山ケンイチ)は20歳になろうとしている大学生で、東京で死んでしまった親友キズキの恋人であった直子(菊地凛子)と出会い・・・というのが冒頭です。


相当昔の小説で、その当時とても流行りました。個人的にはもう少し前からの読者でしたが、例に漏れず私も読みました、私は高校生でした。村上春樹の小説の影響力と言いますか、感染力はかなりのものですし、良い評価も悪い評価もあるでしょうけれど、この読みやすさと、文体、そして「この主人公は自分の事だ(もしくはもっともこの小説を理解しているのは私だ)」と思わせるのが特別上手いと思ってます。そういう意味でインパクト強かったです。「海辺のカフカ」以降、だいぶ変わっているとは思いますが、読まれる作家であるということは凄い事だと思います。村上作品、好きな人は凄い好き、嫌いな人は凄く嫌い、という評価の別れる作家さんだと思ってます。


そんな村上作品の映画化です、私は原作のある映画化は、基本的に原作を読んでから見たいと思っています。というのも、原作の何を映画化したかったのか?に興味があるからです。読書をするということは頭の中で知らぬ間に最も都合よく映像化しているとも言えますし、その頭の中の映像化はその人にとっての完成形である以上、原作を超えることはとても難しいと思います。しかし、その中でも映像化することで新たな深みが得られたりするのが面白いと思ってます。そういう意味で原作のある映像化は楽しいものですが、ハードルも高い気がします。個人的な数少ない経験の中で最も映像化に忠実に成功し、且つ映像化して良かったと思えるのは「刑務所のリタ・ヘイワース」スティーブン・キング著の映画化「ショーシャンクの空に」だと思ってます。


この映画も、とても忠実に映像化出来ていると思います。最初、直子とミドリのキャスティングは相当難しいのでは?と思っていたので敬遠していたのですが(もうひとつの敬遠しがちなのはセリフの難しさです)、最初は違和感あったのですが、直子に関しては納得してしまいました。ミドリは本当に難しいキャラクターだと思いますが、ミドリを演じた俳優さんも悪くなかったと思います。個人的には物語上の最も重要な人物がハツミさんだったのですが、恐らく私の思い込みが強いせいか、期待が高すぎたのでしょうけれど、もうひとつ私の好みではなかったです。出来ればビリヤードのシーンは入れて欲しかったですし、オレンジに染まるシーンも見てみたかったです。そして忘れられないのが突撃隊と永沢先輩。結構特異なキャラクターですし(対照的ですが)、オーバーにするとこの映画から浮いてしまいかねないのですが、微妙なラインで留まっていて良かったと思います。


最後の最後のアレですが、映像化によって何か分かるかも?と期待しましたが、やはりよく分からなかったです、原作でも唐突なのでしょうがないのでしょうけれど。原作にはいろいろ思うところあるんですが、まぁ映画の感想ですし。しかし、「レイコさんは年下」という事実は結構きますね・・・


いろいろ言及されている作品ですし、批評もそれこそ多数あると思います。そのうえベストセラーの宿命だとも思いますが、酷評も多い作品です。しかし、それでもこれだけ読まれた作品でありますし映像化を望んだ人も多いからこその映像化だと思います。とてもハードルの高い挑戦だと思いますし、一定以上の水準にあると私は感じました。


この作品のセリフ回しはとても非現実的ですし、こんな喋り方する人はまずお目にかかれないんですが、それでも、原作を読んでいる人には楽しめるセリフだったのではないでしょうか?草原の映像は素晴らしかったと思います。ロケーションは本当に凄いですし、当時の寮や大学を結構リアルに再現できているのではないか?と感じました。手間暇かかっていると思います。


原作を読まれている方で映像化を見てみたい方にオススメ致します。