日露戦争出征前、最後の晩。
おはなはんは夫の軍服を着て軍帽を被り、墨で髭を書き、夫の前に現れる。
「速水中尉、命令！速水中尉はいかなることがあっても決して死ぬべからず！たとえ立派な死に方でも決して死ぬべからず！たとえ手足を失うとも死ぬべからず！たとえ目を失うとも死ぬべからず！生きて戻るべし！」
夫は目に熱い涙をため敬礼し「復唱！速水中尉はいかなることがあるとも必ず生きて戻ります！」
これだよ！こういうシーンが泣けるんだよ！

おてんば娘で女学校でも人気者。弟たちとベースボールを楽しむおはなはん！
そんな元気いっぱいのおはなはんが結婚した薩摩男の速水中尉。
「おかえりなさい！」と敬礼して出迎える可愛いおはなはん！速水中尉はおはなはんがかわいくてかわいくて仕方がない。
「嫁を貰ったはずが子供を貰ったようだ笑」と照れて軍人仲間に話す速水中尉。
そんな無邪気なおはなはんが日露戦争出征前の最期の晩、「必ず生きて戻ってきて！」と命令を出すが故に速水中尉はジーンときたのだ。
感動的なシーンというのは繋がりが大事なのだ。そのシーンに至るまでの背景が大切なのだ。

遼陽城頭夜は明けて
有明月の影凄く
霧立ち込むる高梁の
中なる塹壕声絶えて
目覚めがちなる敵兵の
胆驚かす秋の風