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スパルタンXのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

スパルタンX(1984年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

スペイン・バルセロナ。トーマスとデビットは、キッチン・カーで商売をしていたある日、怪しい男たちに追われる美女シルビアを助ける。友人のヘボ探偵・モビーの手を借り、実はシルビアが伯爵の娘で、彼女の遺産を狙う伯爵の弟が一味の黒幕だと知ったトーマスたち。だが度重なる襲撃に、シルビアがさらわれてしまう…。

新製品の栄養ドリンクか?悪の組織名か?はたまた殺戮兵器の名前か?…と、幼い頃に邦題を始めて聞いた時、思ったものである。
しかし、その実態は若者が異国で人助けしたら、事件に巻き込まれるというシンプルな話。
ジャッキー・チェンが香港を飛び出して、スペインでオールロケを敢行したアクション・コメディの秀作。
ユン・ピョウ、サモ・ハン・キンポーとの「香港三大カンフースター夢の共演」を楽しむならば、この作品が一番だ。

なぜバルセロナでカンフーの達人がキッチンカーで商売をしているのか?
それが物語の上で、本作の一番の謎なのだが突っ込むのは野暮だ。
若きジャッキーたち同様に、役柄も若さに任せて世界に飛び出し、見聞を広めているとのだと思えば良い。
前半のコテコテのコメディパートは、見ていて恥ずかしくもなるが、ハツラツとした若気の至りである。

ジャッキーが「アクションの主役」として一番目立つ訳だが、刑事でもスパイでも怪盗でもない一般人というのは、彼の作品の中でも珍しい。
困っている女性を助ける名もなき正義漢というのが、我々庶民としても共感できる。
それでいて、飄々としているが、優しくてしかも強いというジャッキーの人柄を感じる「理想の主人公像」を確立している。

共演のユン・ピョウはヒロインの本命であり「ロマンスの主役」。
兼監督のサモ・ハン・キンポーは「一番情けなくて、散々な目に遭う」探偵の役を先輩として率先して引き受け、コメディリリーフに徹して良い味を出している。
キャラクターが被らず、三大スターの役割分担のバランスが非常に良いのである。

3人はシルビアを助けるため、戦闘集団と壮絶な肉弾戦を繰り広げる。
何と言ってもジャッキー対敵のラスボス「アメリカン・ギャング」ことベニー・ユキーデの格闘シーンはあまりにも有名。
「一心同体、三銃士」という掛け合いの合体攻撃も楽しいが、この戦いがジャッキー映画のベストバウトであることは間違いない。
なにせ、本物の格闘家である。
面構えからしてベニー・ユキーデの存在感も抜群で「最強の敵」である事がはっきり感じられる演出も冴える。
ラッシュの勢いが凄過ぎて、防戦一方のジャッキーが押されまくり、背中に当たったテーブルが、そのまま音を立ててズレ動く描写。
蹴りの風圧が凄過ぎて、幾つもの蝋燭の炎が、一瞬で消えてしまう描写。
どちらも印象的で「こいつは強い!」と確信させる。
個人的には、対決中にユキーデがサスペンダーをパチンと弾く、自信満々でいてキザな所作がカッコよくてツボだ。

そんな2人の戦いが「窓から落ちそうになった敵の脚を掴み、引き上げて助ける主人公」という形で決着するのも、実にジャッキー映画らしい。
彼には「相手を殺す」倒し方よりも「相手を救う」倒し方の方が、人の良いジャッキーのキャラクターに似合う。

ただ本作が凄いのは、ユキーデとの格闘シーンだけではない。
スケートボードやバイク、ハイテクカーなどの乗り物や、バルセロナの街並みや建物を活かして、随所に散りばめられたアクションはアイディアに富み、スピード感に溢れる。
スペインの情景も美しく、バルセロナ・オリンピック以前に世界遺産のサクラダ・ファミリアを世に知らしめた功績は高い(笑)
事実、幼い頃の私は、この映画でサクラダ・ファミリアを知った。

やはり本作の最大の謎は、なぜこのような邦題を付けたのか?である(笑)。
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