このレビューはネタバレを含みます
73歳の老人アルヴィンが、ある日、仲たがいしていた兄ライルが倒れたとの知らせを聞き、遠く離れた町まで芝刈り機に乗って会いに行くお話。
久しぶりに観ましたが、やはり良い。
デヴィッド・リンチ監督の人物描写が静かに輝いている作品です。単なる良い人とかではなく、人。生きてきた、生きている人を映画を通して描いているなあと感じます。もしリンチが苦手という方も、この作品はみてほしいなと思います。
アイオワ州からウィスコンシン州へ向かう秋の風景がとても良い。カメラワークや人物の動作がゆったりしていて、そこに主人公アルヴィンの意志というかアルヴィンの今の生き様が滲み出ています。
台詞のひとつひとつも、変に飾っていなく、じわじわと響いてきます。
アルヴィンの娘が旅に出る父の食糧を買いに行ったスーパーでの女性レジ係との会話のシーン。最後のふたりの表情が好きです。会話が少しちぐはぐになりながらも、最後はなんとなく「このソーセージあんまり好みじゃないのよね」みたいな、こんなのが好みなのって変ねー、みたいな感じで、通じ合うシーンに笑ってしまいます。人と人のこんな距離感って愛らしいなと思います。
場面転換の暗転やオーバーラップも心地よいです。
アンジェロ・バダラメンティの音楽のなんとも余裕のあるユーモラスなメロディーがたまりません。アルヴィンの佇まいと秋の空気にぴったりです。
出来れば映画館のスクリーンで、出来なければ、夜に部屋の明かりを全部消して、画面いっぱいのあの満天の星空を眺めたい作品。
繰り返し観て行きたい作品です。