Rita

マレーナのRitaのレビュー・感想・評価

マレーナ(2000年製作の映画)
3.6
少年の大人の女性への恋。切ない青春物語。

12歳の少年レナートは、歳上の女性マレーナに一目惚れする。やがて未亡人となったマレーナは生きる為、娼婦になる。彼女を見守る少年は大人の女性に恋をすることで人間の残酷性や生きることの厳しさなどを痛感する。一生忘れることのない苦い青春である。

マレーナは夫が亡くなって哀しくても誰にも理解されない。女性からの冷たい目線。男性からの欲望の眼差し。こんなにも孤独なのに理解してあげられるのは見守ることしかできない少年だけ。生きるために人の目を気にせず必死に自分を捨ててでも頑張るマレーナを見ていると、いつになったら幸せになるのかと悲しくなりました。

マレーナが綺麗な長い髪をハサミでばっさりと切っていくシーンには同じ女として見てて辛い。赤毛に派手なメイク、娼婦になり大勢の男が彼女の咥えたタバコにライターの火を差し出すシーンは切なくも、自分ではない人格をつくったように感じ、かっこよかったです。

街の女性たちにマレーナは無理やり引っ張り出され公衆の場で散々に物で殴られ蹴られ、さらには髪を坊主に切られてしまう。破られた服で裸の姿で血だらけになりながら震えるマレーナ。今まで色目を使っていた男性たちは今のマレーナには誰も助けの手を差し出すことはなかった。

亡くなったと思っていた夫がマレーナの元に右腕を無くし生きて帰ってきたとき、少年が直接ではないがマレーナの幸せを願い事情を手紙で教えたシーンで安心しました。一度は去った夫がマレーナを連れ2人で故郷に戻ってくるシーンには緊迫感が漂っており、このシーンからはマレーナにとって何が起ころうと夫と生きる唯一の場所なんだと感じ取れます。

マレーナが1人で買い物に来た時、多くの女性に見つめられ、しばらくして優しく接してきた場面で落ち着きませんでした。過去のことは流しましょうということなのか。彼女に酷い仕打ちをしたのに何もなかったことになるなんて、ハッピーエンドとは言えませんね。

少年から見るマレーナという一人の女性。ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品は悲しいけど楽しく温かい気持ちにさせてくれる作品が多いイメージですが、この作品では切なさとマレーナの緊張感がずっと漂ってました。それだけではなく、イタリアの美しいシチリア島の街並みは素敵でした。
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