雑記猫

パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たちの雑記猫のレビュー・感想・評価

3.0
 カリブ海の港町ポート・ロイヤルが海賊キャプテン・ヘクター・バルボッサ一味に襲われる。提督の娘エリザベス・スワンの持つ黄金の金貨を狙ってやってきた海賊たちは、金貨と彼女を連れ去ってしまう。エリザベスの幼馴染の鍛冶屋の青年ウィル・ターナーは、謎の海賊キャプテン・ジャック・スパロウと共に彼女を救出に向かう。


 娯楽性に全振りしたエンターテインメント映画という感じの作品で、様々なギミックを生かした映像的な面白さが印象的だ。このギミックがアトラクション的、TVゲーム的な作りになっていて、それぞれのバトルステージでそのステージのギミックをいかに面白く見せるかに注力されているように感じる。例えば、序盤の鍛冶屋でのウィルとジャック・スパロウの格闘シーンでは、鍛冶屋の工場の至るところに剣が突き刺さっているので、これをいかにうまく利用しながら戦うかというところで映像的な面白さを生み出している。また、中盤のインターセプター号とブラックパール号との戦闘では、両者を並走させることで戦闘状況を分かりやすくしたうえで、双方の大砲の打ち合いや戦場での格闘で盛り上げ、さらにはジャック・スパロウには両方の船を行き来させるなど、用意した舞台で遊べるだけ遊んで見せている。その中でも特に本作一番のギミックは、海賊キャプテン・ヘクター・バルボッサ一味の、月の光を浴びると朽ちた体が顕になるというギミックであろう。海軍の軍艦を襲撃するために海底を進軍する海賊たちが、船の下を通るときだけ元の姿に戻り、そこを通り抜けるとまた朽ちた姿へと変貌する一連のシークエンスはよく考えられている。また、ところどころ月明かりがさす洞窟で姿をコロコロと変貌させながら戦うジャック・スパロウとバルボッサの洞窟での最後の戦闘シーンも見ていて非常に面白い。


 どちらかと言うと映像的な面白さに力を入れている作品で、脚本自体はそこまで特筆すべき点はない。ストーリーラインも比較的ごちゃごちゃしていて、死の島を出たり入ったりを繰り返す忙しない物語となっている。ただ、割とごちゃついた話でありながら、序盤、中盤、終盤それぞれで「エリザベスを助けに行く」、「海賊から逃げる」、「ウィルを助けに行く」とはっきりと分かりやすい物語上の目的を明示することで、ストーリーから取り残されることがないように配慮されている点は評価したい。このあたりのストーリー整備力はさすがディズニー作品といったところだろう。
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