櫻イミト

恋人たちの失われた革命の櫻イミトのレビュー・感想・評価

恋人たちの失われた革命(2005年製作の映画)
3.5
“ゴダールの再来”と呼ばれるポスト・ヌーヴェル・ヴァーグの最重要監督フィリップ・ガレルの代表作。1960年代末期、革命の季節を舞台にした青春映画(178分)。主演は息子のルイ・ガレル。ヴェネツィア映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞。

1968年5月、パリ。ニ十歳の詩人フランソワ(ルイ・ガレル)は兵役を拒否し街に出てゆく。そこには若者たちがあふれ機動隊との衝突を繰り広げていた。やがて彼は彫刻家を目指すリリーと出会い恋に落ちるのだが。。。

ずっと宿題にしていたガレル監督作品を初鑑賞。予想していたよりも難解さは感じなかった。始終アンニュイな雰囲気でパリ五月革命の時代の芸術志向の若者の青春、例えれば森田童子の「ぼくたちの失敗」が似合うような儚い夢と喪失が描かれていた。

モノクロの画面と冗長とも感じる編集テンポは、長尺なのも含めてコスタ―シュ監督の「ママと娼婦」(1973)を連想させる。ガレル監督はコスタ―シュ監督の舎弟のような関係だったらしいので大きく影響を受けているのかもしれない。

2005年の制作にしては1960年代の空気感をうまく醸し出していたと思う。その時代を振り返る際に特有のセンチメンタルなムードも嫌いではない。ただ、他所の国の繊細な感傷なので共有するまでには至らなかった。日本映画が舞台であれば感じ方は大きく違うと思う。

劇中で若者たちが語りあうシーンで、ヒロインが“「革命前夜」観た?ベルナルド・ベルトルッチ”とカメラに向かって語りかける。本作は、ベルトルッチ監督が同じくパリ五月革命の青春を描いた「ドリーマーズ」(2003)に対する返答と評されている。同作には本作の主役を演じたルイ・ガレルも出演している。そちらは未見なので近いうちに観てみたい。

※劇中曲としてガレル監督の死別した前妻であるニコの「Vegas」 、キンクスの「This Time Tomorrow」が使用されている
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