耳子くん

ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人の耳子くんのレビュー・感想・評価

5.0
この映像を“映画”としてどう観るべきかは非常に悩ましいけれど、それでもやっぱりいまのわたしにとっては最も大切な一本だと断言しても良い。

腰は曲がっても作品をみるときは獣のような眼光を持つ主人と、その手をニコニコと引きながら何処へでも連れ添って(引っ張って)歩く婦人、そのシルエットだけでもたまらなく画になるのに、二人の名前が“ハーブ”と“ドロシー”だなんてまるでお伽話のようでできすぎじゃない?きっとどこかに作画監督がいて、二人を操って物語を作り出しているんだわと疑わざるを得ないようなこれは現実のお伽話。

二人の面白いところは架空の登場人物のようでありながら、同時に物語の作り手でもあるという点。彼らが買い集める作品はアーティストの到達点じゃなくてそのプロセス。成長の過程がどこにあるのかを見極めて、彼ら自身でそれぞれのアーティストの物語を編んでいる。そんな風に作品と作家を見つめることができる鑑賞者は世界にどれくらいいるのだろう。
二人の魅力的なキャラクターばかりに目を奪われがちだけど、どこまで意識的に物語を作り出しているのか…欲を言えばその部分により着目してほしかった。
…けど、敢えて語らないのがやっぱり物語の登場人物的で良いのかな。


「文化を育てる」とはまさにこういうことなんだと、心に深く刻みつけ、好きな人たちにぜひ観てもらいたいと思う大切な作品。
耳子くん

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