はぎはら

明日に向って撃て!のはぎはらのレビュー・感想・評価

明日に向って撃て!(1969年製作の映画)
5.0
初見は、高校一年の4月。高校のある街の映画館で観たこの作品ですっかり映画の魔法にかかってしまった。(年がばればれですが‥‥)。

ジョージ・ロイ・ヒル監督の洗練された演出、流麗なパート・バカラックの音楽、そしてポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス。
映画の魅力が全て詰まっている、と思う。

最近観直して、この映画のテーマは居場所を失ってしまった者たちへの挽歌のように思えた。全編、乾いているが深い悲しみが流れている。

西部開拓時代に名を馳せた2人組の強盗サンダンス・キッドとブッチ・キャシディの物語。彼らはその日暮らしを続けている。家族も家もない。盗んだ金で酒と女に入れあげる。
そんな2人の暮らしがいつまでも続くはずがないのに、彼らはやめようとしない。
彼らは、どこにも彼らの行き場がないことが分かっているからだ。

気に入っていた自転車を投げすてるシーンも寂しさを映し出している。鉄道が敷かれ文明が開拓地にも押し寄せてくるのを彼らは止められない。

彼らには逃げることしかできない。生きる場所を求めて、アメリカから未開拓の地に流れていく。ブッチ・キャシディはボリビアを希望の地として語るが、そこには失意が透けて見える。

そして、男2人と女1人の逃避行がなんとも切ない。3人の関係には、大人になりきれない男たちの悲哀がある。成熟した大人の男はけして男2人と女1人の関係なんか続けていかない。

ラストシーンは、打ち上げた花火のように、はかなく美しい。
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