アンダーシャフト

明日に向って撃て!のアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

明日に向って撃て!(1969年製作の映画)
3.6
アメリカンニューシネマを代表する作品の1つ。派手なアクションがある訳でもなく、感動するわけでもないのに、たまにふと観たくなる一本です。

開拓時代が終焉を迎えようとしていたアメリカ西部。他人の金を奪うことでしか生きる術を知らないアウトロー、ブッチとサンダンスの物語。
あちこちで生業の銀行強盗がやりにくくなると標的を列車に換え、凄腕のバウンティ·ハンターに追われるようになると南米に逃げてまた強盗…
かなり行き当たりばったりな感じですが、実は二人とも、何度かまっとうな堅気の生活を考えます。でも、やっぱり無理ってなって、あっさり挫折。
結局、自分らしい生き方しかできない逡巡と葛藤が、ちょくちょくのどかなストーリー展開の中に垣間見ることができるようです。

ブッチを演じるポール·ニューマン。美男子ではないけど、今回の役にとても合ってて、ちょっと風格が出始めてるところがカッコいい。遠くを見つめる表情や、ふとした笑顔など、さりげないカットに彼の魅力がいっぱい。
相棒のサンダンスを演じるレッドフォードは、新人らしく若々しくきれいな顔立ちで、ポール·ニューマンといい対照を成してます。少しぎこちない感じが、とても新鮮です。(ブラッド·ピットがメジャーデビューした時、若い頃のレッドフォードに似てると言われてたのを記憶してますが、自分的にはあんまり似てないと思う…)

社会や体制に逆らって生きるというより、自分達の思うがまま奔放に生きる二人を飄々としたやり取りで綴ったところが、それまでの西部劇とは大きく異なる点だと感じました。

何かに立ち向かったり、強大な敵に打ち勝ったりする話は出てこないし、主人公たちは正義感や責任感なんて一切無い。云わば単なる強盗で、彼らなりの矜持を持ってる訳でもなく、ヒーロー的キャラでもないので、スカッとする展開では正直ありません。

敢えて言うなら、(勝手な想像ですが…)疲弊し混沌とした社会状況、「強いアメリカ」の限界、閉塞感や将来への不安と多様化する若者の価値観など、当時のアメリカの社会背景がバックボーンとなって、夢と自由を求めて現状から逃れることをテーマにしたこの作品が生まれたのかもしれません。

ただ純粋&無軌道に夢と自由を探し求めた二人のラストシーンは、刹那的で感動とか共感とか同情とは無縁のはずなのに、自分の心の中に変な清々しさ(一部羨ましさかも…)が込み上げる、ある意味困った作品です。


〈余談〉
頭が切れてユーモアがあり、口八丁でみんなに好かれる楽天家のブッチ。
無口でどこか不器用、いざというとき便りになる早撃ちガンマンのサンダンス。
この作品を観る度に、ブッチとサンダンスのやり取りが、ルパンと次元のやり取りの感じにかぶってしょうがない…
でも、キャスリン·ロス演じるヒロイン、エッタは、全然不二子チックじゃないけど…