半兵衛

狼の王子の半兵衛のレビュー・感想・評価

狼の王子(1963年製作の映画)
3.3
主題である石原慎太郎原作らしい観念的なやくざの堅気と暴力の狭間で苦悩するドラマは正直どうでもよくて、随所に登場する鮮烈な暴力シーンの数々の迫力が素晴らしいのでそっちに興奮しながら見てしまった。高橋英樹の好青年の雰囲気はありつつも何をしでかすかわからないキャラクターも暴力の血を抑えられない主人公像によく似合っている。

戦災孤児から組の跡取りになった高橋英樹をサポートする加藤嘉の古き任侠道に生きる老ヤクザがいぶし銀の魅力をはなち、敵対する組に殴り込む場面が舛田利雄監督の迫力あるアクション演出も相まって結構決まっていた。

そんな東映任侠映画みたいな殴り込みから『仁義なき戦い 広島死闘篇』の北大路欣也みたいなクールなバイオレンスで終わらせる東映実録路線のような終わらせ方がエモくて、任侠映画の歴史を10年も先取りしてしまった舛田監督って凄くない?と感嘆してしまう。ワンシーンだけ出てくる藤竜也も『広島死闘篇』の千葉真一みたいなキャラでその筋骨粒々とした体つきや野獣のような演技が魅力的だったのでもっと活躍してほしかった。
半兵衛

半兵衛