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台風クラブのkonoesakutaのレビュー・感想・評価

台風クラブ(1985年製作の映画)
3.5
故相米監督の大傑作。 

台風が過ぎ、青空が広がる朝が来ると、あの高揚感も何もかもが次第に薄れていく。たぶんあの後少年少女たちは何もなかったように鬱屈した日常に戻っていくんだろう。誰一人三上君の死について理解できないまま。

 誰も変容したように感じなかった。三上君の死さえ彼の変容の結果だとは思えなかった。彼は死ぬべくして死んだ。教師との喧嘩や彼女に連絡がつかないなか、自己を正当化するために意地を張った。台風の中で、浅はかに哲学を持ったように装って飛び降りた。

 青春時から青年期への通過儀礼的なものではなく、もっと単純かつ衝動的な中学生特有の集団ヒステリーのような一瞬を、台風のくるドキドキワクワク感とともに描き切った作品であると感じた。
 観る人によっては「なんだこの映画、何が残るんだ?」という気にさせられるかもしれない。でもこの映画は、人生に一度しかない中学校生活最後の年の、大人でも子どもでもない彼らの一種の抵抗や反乱や狂気を写真のように切り取った作品なので致し方ない。

 台風のひと時だけで人間がそんなに成長してたまるか。