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キング 罪の王のMondayAddamsのレビュー・感想・評価

キング 罪の王(2005年製作の映画)
4.0
父を知らないまま、未婚の母に育てられ、その母をも失くした主人公のエルヴィス(ガエル・ガルシア・ベルナル)は海軍を除隊してすぐに、実の父親に会いに行くが、
父は裕福な牧師として、美しい妻、二人の子供に恵まれ幸せな生活を送っており、
「過去の過ち」によって生まれてしまったエルヴィスを拒絶。
孤独なエルヴィスは唯一の身寄りである父から冷たくあしらわれた事実を受け止めきれず、父に復讐することになるのだが、エルヴィス本人に明確な「復讐」の意図があったのか、最後までわからないほどに彼の「復讐」は淡々としている。
「危険な遊び」や「悪童日記」に描かれるような、子供が持っている無垢な悪意というか、そういうもをエルヴィスは持っており、それを繊細に描き切ったガエル・ガルシア・ベルナルの演技がとにかくすごい。

確かに胸糞の悪くなるような話ではあるのだけど、
妹と肉体関係を持ち子供を孕ませ、何の躊躇いもなく兄弟を刺し殺し、消えた(消した)息子の代わりを嬉々として務め、一度は拒絶された父の家庭に入り込み、父のすべてをめちゃくちゃに破壊するエルヴィスの本当の目的は、父に対する復讐ではなく、
すべてを失えば父親の愛情は自分だけのものになる、独り占めできる、父に愛されたい、という純粋な想いだったのではないかと思えてならず、
その狂った愛への渇望が美しいとさえ思った。
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