森崎

病院坂の首縊りの家の森崎のレビュー・感想・評価

病院坂の首縊りの家(1979年製作の映画)
3.0
市川崑監督作金田一シリーズ一気見週間その④、シリーズ第五作目「病院坂の首縊りの家」。ここでシリーズはいったん完結。

作品名もまったく知らなかった初見の物語。原作は長編らしく映画は大幅に脚色されているそう。なので冒頭から今まではチョイ役としてこっそり出ていた横溝正史が満を持して登場、長台詞もなんのそので金田一と事件を結びつける。(一緒に登場する横溝正史の奥さまが何気に声は通るし台詞は自然だしで凄い。)
そして草刈正雄演じる黙太郎が金田一のサポート役として活躍、物語の舞台となる法眼家の繋がりを口頭で説明するも「わかりますか」「よくわかりません」「図を書いてみたんです」なんていうやりとりが。自分も引き続き相関図を書いてはいたんだけど確かにとにかく複雑でややこしい。

すでに事件の匂いがするところへ依頼を受けて赴く訳ではなく訪れた先で出くわした生首から始まる本作、今までの過去作とはとにかく雰囲気が違い人間模様が興味深い。オープニングのクレジットはあの折れ曲がった表記ではなく横からスライドしたり下から入ってきたり。しかもバックで流れるのはジャズと妙にハイカラ。電話口で何者かと話す六人の男女を次々に並べたシーンは格好良かった。


とりあえずこれにて一気見はおしまい。
かねがね金田一を見た人間なら不倫、ましてや妻以外の人を孕ませるなんてもっての外、恐ろしくてできたもんじゃないと思うに違いないと思っているんだけど、他にも蔑ろにされたものの怨念や男と女それぞれの嫉妬と恨みと愛情、純粋なる忠誠などなど、キャッチーなタイトルと派手で凄惨な殺人の裏で様々な感情があるからこそ今なお金田一シリーズが愛されているのだなと感じる。
石坂浩二の金田一、飄々としているけど愛される感じが良かったなあ。いつか自分も金田一みたいに話を聞きながら「経費で落とせるんですよ」と言って連れにご飯を奢りたい。一度言ってみたい台詞。
森崎

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