じゃかば

フローズン・タイムのじゃかばのレビュー・感想・評価

フローズン・タイム(2006年製作の映画)
4.0
主人公の落ち着いた語りと映像と音楽がマッチしていてよかった。写真家が監督らしく、時間停止という仕掛けで映画にうまく静止画を組み込んでいる。ただその割には映像とかカット割りが普通すぎる。もっと「静止画」を活かした革新的な映像であってもよかった。
(時間停止しているスーパーのシーンで買い物客の女性が瞬きしてしまっているシーンがそのまま使われているのは仕事が雑だし、こだわりが感じられない。)

女性の身体の曲線美は男性のそれにはないもので、だからこそ見惚れてしまう気持ちはとてもよくわかる。ホームステイしていたスウェーデン娘の裸体は本当に綺麗だった。絵心が全くない自分でさえもスケッチしたくなった程だ。

どちらかと言えば冴えない主人公(ただしイケメンに限る)の主観で描いた恋愛映画というのは、思春期に童貞拗らせて童貞臭さが抜けない我々非モテ男子が主人公に自己を投影しがちで、こういうエンディングだとすぐに「素晴らしい!」と思ってしまう笑

ただ同じ系統の映画としてやはり「500日のサマー」と比較するとちょっと見劣りするかな。

レビューでちらほら「アメリカ」というワードを見かけますが、イギリス映画です。アメリカの大学生だったらもっと下品でカオスだと思います笑(偏見)

※ここから先はネタバレありの個人的なツッコミがメインです。

だがしかし、現実はそう甘くはない!こういう我々の理想と願望が全て叶えられるハッピーエンディング映画は、実は男子側の自己満足にしか過ぎないのではということを考えずにはいられない。

「眠れなくなって特殊な力をゲットして、新しく始めたバイト先でいい子に出会って、そうこうしているうちにいい感じになるも、ちょっとしたすれ違いがあって、だけど自分の絵のおかげでそれを乗り越えて幸せに結ばれる。」

結局失恋をした主人公は何か変わったのだろうか。元カノが別れ話をする場面とシャロンが玄関先で怒っている場面はほぼ同じに描写されている。主人公の女性に対する付き合い方そのものは何も変わっていないようにも見える。
幼少期に好きな女の子とのキスから逃げてしまった経験にも共通して言えることだが、非常に受け身な感じがする。昔から「向こうが怒っちゃって嫌われたしもうしょうがない。あーあ女の子って難しいな。困ったな。」っていうスタンス。

本当に好きならもっと必死になれよ!!お前の親友見習ってあの手この手使ってヨリ戻そうよ!!カッコ付けて個展の招待状送りつけてんじゃねーよ!!その前にさっさと事情説明して許してもらえよ!!
極め付けは呼びつけた個展でズラリと並んだ「隠し書き」した肖像画。
シャロンさん本当に女神ですね。ラブラブのカップルならまだしも、幻滅して喧嘩別れした相手の個展に行ったら自分の絵ばかりが並んでいるのは普通に気持ち悪いのでは?(ぜひ女性の方にお聞きしたい。)
よくそれで仲直りできたな…それかもともとシャロンさん実はそんなに怒ってなかったのかな。そうだとしたらあのまま放置されてむしろ悪化してそう。

それと4週間も眠れなくなるくらいに辛かった別れなのに、あっさり元カノのこと忘れすぎ…あの時は仲直りしようとして電話までしてたのに。
心移りが速いのが男という生き物なのか。同じ非モテ童貞拗らせ系映画でも『秒速5センチメートル』の主人公遠野くんとは対照的。遠野くんがかわいそう。

たくさん文句を言いましたが、悔しいけどやはりこの映画は我々のような人間には結構刺さります。恋愛で悩んでいる時、夜中に観たらそりゃもうグサグサと。

願わくば自分も時間を止めてあの人といつまでも二人きりで…
じゃかば

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