キンキン

百万円と苦虫女のキンキンのレビュー・感想・評価

百万円と苦虫女(2008年製作の映画)
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 前に見たのは、まだ十代の時。上京したばっかりで、バイトが上手くいかない日々や謝ってばかりの鈴子の姿に自分を重ねては、心苦しかったな。それから数年経って先日再鑑賞したのだけど、未だにホームセンターで「慣れちゃってるからだよ。」と失敗を怒られる様子は頭に残ってた。何故なら、身に覚えがあるから。初見の時と比べると、あの頃より自身の脆い部分は減っているように思えて、少し成長している事に気づかされた。
 ってか、本作が公開されてもう9年も経ってるのか。

 この映画の何が好きかって、ラストシーンなんですよ。あそこで、ありがちな恋愛映画のように幕を閉じていたら自分は本作の内容を忘れていただろう。土着的で、映画が終わってもまだ何処かで生きているように感じるんですよね。
 だから、あの娘が一生懸命生きているのなら、私も!的な。前向きな気持ちというより、前を向くしかない!と言う印象を受けたのです。

 と言うのも、自分に自信がないと、周りの言葉を受け入れる心が無いんですよ。その上相談する相手もいないと尚更。鈴子は携帯も持ってないし、友達もいない。自分探しをしないことに慣れちゃっているから、森山未來演じる中島の不器用な気持ちにも気づけず、日に日にチャンスだったり幸せを逃しているわけで…。なにかフラグが立つと、もう引くってのが当たり前になってる。
 じゃあ、どうしたらこう言う人は前を向くようになるか?自分で気づくしかないんですよ。当然ですけど。ここにいる自分を、別の所に向かわせるのも自分。弟からの手紙が重大な役割を果たします。
 自分も、上京した時はバイトも上手くいかないし、友達も出来ないし、メンヘラって言われるから誰にも相談したくないし、って閉じ籠ってました。そのうち荒んで来るわけですが、ある時ね何かがきっかけで泣くわけですよ。大泣き。テレビだったり、ラジオから流れてくる音楽だったり、何かで。んで、そしたら気分がある程度は軽くなっている。泣いても何も変わらないけど、気持ちは「とりあえず、やってみよう!」って気になっていました。んで、そう言うのを何回も繰り返して行くうちに、いつの間にか自分は東京生活にも慣れてきてるし知り合いも増えたんですよ。
 だから、この映画のラストは「前を向くしかない!」ってね。幸せが長く続かないのなら、不幸せも長く続かないんだと思いますよ。

 どうせ、また凹む事があるのなら、明るく生きたい。
キンキン

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