日本の梅雨のジメジメした気候だけでもかなりの不快感があるのに、水回りの気持ち悪い湿り気に加え、幼少期の見捨てられ体験からくる不安感、寂寞感も重ねることでよりどんよりした、尾を引く恐怖が生まれている傑作ホラー。
母からの見捨てられ体験のある主人公・淑美が、娘の郁子を大切にしながら、自分のような思いをしてほしくないと強く思っているということを丁寧に描写していく。日本の集合住宅特有の湿気と薄気味悪さが漂った建物に現れた少女の霊が、同じく見捨てられ体験によって悔恨を残していることが分かっていく話になっていて、それらが想像の上を行く展開で回収されてかなりショッキングだったし、見る人が見れば容赦なく抉られるものがあると思う。
この作品は細かいところに気持悪さを置いていく演出が素晴らしい。雨漏りや赤いショルダーバッグといったポイントはもちろん、窓の外の雨をふと眺めてトラウマを思い出すと共にぼーっとしてしまったり、保育園で園児が叱られているところに居合わせてしまったりと、取り止めもないようで本当は不快だよねということを切り取って突き付けてくる感じがある。
クライマックスではトラウマの浄化でもあり、トラウマの再生産でもある状況が用意され、起こってほしくなかったが避けられない事件となる。母親という唯一無二な存在と、母性本能ともトラウマの治癒から来る喜びとも取れる感情が強烈に輝いている。
ジャンプスケアもここぞという場面で来てくれて良かった。
ただ、ラストシーンの最後の一言要らなくない?あれは蛇足だと思いました。