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明日なき追撃のodyssのレビュー・感想・評価

明日なき追撃(1975年製作の映画)
2.0
【反体制喜劇になりきれず】

BSにて。
1975年にカーク・ダグラスが製作と監督に加えて主役を演じているという映画。

原作は読んでいないんですが、1971年の小説だというから、ちょうどアメリカではベトナム反戦を初めとして反体制運動が盛んになっていたころなので、内容もそういうふうなのだろうと想像します。

しかしこの映画の出来はお世辞にもほめられたものではありません。

日本語版ウィキの説明だと、カーク・ダグラス演じる保安官は権勢欲の強い人物ということになっていますが、この映画を見る限りあまりそういう感じがしません。

たしかに彼は連邦保安官から上院議員への立候補を狙っていますが、政治家になること自体が悪いわけではない。彼の演説シーンを聞いても、最初からどんな争いも拒否する平和主義者なら別ですが、常識的な内容であり、特に問題があるとは思われない。

逆に、この連邦保安官に批判的な新聞社主(かつて出征して片手と片足を失っている)が、なるほどもっともだと思えるような保安官批判を述べるわけでもない。

つまり、保安官への批判があまり前面に出ていないのです。だから、後半の暗転も説得性が薄くなる。

この映画では新聞の一面ニュースが何度も変更されるシーンが出てきますが、別段政治的な理由からではなく、極悪犯人が逃亡したり捕まったり、また逃亡したりという、情勢の変化を反映しているに過ぎません。

連邦保安官の部下が最後にとる行動も、伏線の張り方が不足していて説得的ではありません。途中で待遇や先行きに対する不安や不満をもっと出しておかないと、「なに、これ?」になってしまいます。

見どころはブルース・ダーン演じる悪役の魅力と、ホテルの女将を演じるベス・ブリッケルの中年美人ぶりでしょうか。
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