てつこてつ

殺しのドレスのてつこてつのレビュー・感想・評価

殺しのドレス(1980年製作の映画)
5.0
「キャリー」で一躍有名となったブライアン・デ・パルマ監督の美学が結集されている傑作サイコサスペンス。原題のDressed to Killは、ヲチの意味も含めて真に秀逸。

デ・パルマならではの、二分割撮影、手前にも奥にもフォーカスを合わせる手法、鏡を巧みに利用した表現、1カットで美術館の一連のシークエンスを流麗に描写する等、とにかく斬新で視聴者を魅惑するありとあらゆるテクニックが使われている。そして、デ・パルマ監督作品ではお馴染みの、作曲家ピノ・ドナッジオが手掛ける官能的で美しい音楽。

マンハッタンのとあるアパートのエレベーター内で起こった、一人の人妻のカミソリによるメッタ切り猟奇殺人事件。被害者の高校生の息子が、事件の唯一の目撃者である美しい娼婦と共に、ブロンドに黒のサングラスをかけた大柄な犯人の女性を探し出そうとする冒険譚。

美しい音楽が流れる冒頭の人妻のシャワーシーン、彼女が自分の性的欲求不満を解消するために、通りすがりの男を美術館で探し求めるシーン、目撃者である娼婦と、彼女を狙う殺人犯が地下鉄内で繰り広げる逃亡劇、エレベーター内での鋭利に光るカミソリによる殺人シーンなど、どれをとっても素晴らしいが、何と言っても最後に犯人像が明らかになる豪雨の中での一連のシークエンスは、エロティックでありながら、驚嘆させられる。

「キャリー」では、いじめっ子を演じた、その後、デ・パルマ監督の妻となったナンシー・アレン、キース・ゴードン、マイケル・ケイン、アンジー・ディキンソンというキャスティングもお見事。

デ・パルマは、「ミッション・インポッシブル」や「アンタッチャブル」といった大作も上手いけれど、やはり彼の魅力が一番輝くのは、この「殺しのドレス」や「ミッドナイト・クロス」、「ボディ・ダブル」、「レイジング・ケイン」といったサイコサスペンス。
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