三島由紀夫の『金閣寺』を市川崑監督、市川雷蔵主演で映画化。仲代達矢、中村鴈治郎出演。
フラッシュバック、回想シーンへの導入演出が全篇を通して見事。
クライマックスの炎上シーンは、市川崑×宮川一夫の映像美が炸裂。
ただ、原作を読んだ時ほどの感情移入や没入感はなかったかな。比較対象が三島由紀夫の完璧な文章になるので、どうしても見劣りしてしまうのは仕方ない。
金閣の美に対する幻想と執着、世界への反感、元来の孤独感情といった、主人公が放火するに至るまでの繊細で豊饒な感情の揺らぎ。
こういった心理描写を正確に映像化するのは不可能なのだろう。そのためか、「吃り=外側に現れる現象」の描写が余分に描かれていたのが気になった。
こればかりは、映画と小説という芸術形態の違いとしか言いようがない。
映画ならではの強みとしては、やはり役者の魅力になるのかな。市川雷蔵の配役はピッタリで、演技は本当に素晴らしかった。