クロスケ

ソナチネのクロスケのネタバレレビュー・内容・結末

ソナチネ(1993年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【再鑑賞】
登場人物たちを乗せた車が、海に伸びる畝りのある長い一本道を見え隠れしながらひた走る。

この道から往来する車の影が消えたとき、それが何を意味するのだろうかと、思いを巡らせているうちに、映画のラストで再びこの一本道が登場します。
村川の帰りを待つ女が、海とは反対方向を向いて立ち、道の遥か遠くをジッと見つめています。その視線の先、彼女の視野には入らない道の途中で、村川を乗せた青い車が路肩に停車しています。運転席に座り、前方を真直ぐ見据えた彼は徐ろに拳銃を取り出したかと思うと、自らのこめかみに銃口を充てがい、頭を撃ち抜きます。
その直後に差し込まれるロングショットに戦慄が走り抜けます。車の後方から奥に海を望む画角で捉えられているのですが、そこに突き抜けるような青い空と海はなく、曇った空が重々しく広がるばかり。救い難く濁った何かが画面を横切っていくのを感じて、背筋が震えました。

太陽と青い空と海が構成する浮世離れした地で、アウトサイダーたちの無益な日々が繰り返される。草むらに打ち捨てられた車が爆破炎上し、黒い煙が立ち昇る。
『気狂いピエロ』の北野武によるオマージュとも言えなくもないですが、スナックやホテルのエレベーター内で展開される殺伐とした暴力描写や画面を切り裂く銃火の禍々しさは、やはり紛れもない北野武の映画です。

※先ごろ、カンヌ国際映画祭への出品と日本での公開が発表された最新作『首』には、寺島進さん、勝村政信さん、津田寛治さんなど『ソナチネ』組も多数出演されるようです。
ただ、その中に大杉漣さんの名前がないのは、やはり寂しいですね。
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