どの北野作品にも共通したテーマとしてあげられるのが,人の愚かしさ,滑稽さだと思う。北野作品で行われる行為には失敗がつきもので,それがシュールの皮を被って笑いへと昇華されていく。
今作においてもそれは正しく,抗争をしに沖縄に来たはずのヤクザたちはいつしか浜辺で遊戯にふけり無為に時を重ねてしまう。そして簡単に銃撃で命を落としていく。
「その男,凶暴につき」と同日に鑑賞したけれど,それよりは好み。沖縄に行くまでのヤクザの日常の描写,画作りは一点の批判の余地がないほど素晴らしい。完璧に引き込まれた。
沖縄到着後はストーリーが停滞する。それがこの映画の主軸となる部分であり価値あるものであることは重々承知した上で,最も好みな形からは外れてしまったと感じた。シンプルに自分の見方があまり良くなかったかもと反省している。
ストーリーdrivenではなく,北野武の温度感とバランス感覚で構成された雰囲気映画だから,そこがどれだけ刺さるかなのだと思う。残念ながら自分はその範囲にはいなかったけれど,価値ある映画体験だった。