独善的トマト

ソナチネの独善的トマトのレビュー・感想・評価

ソナチネ(1993年製作の映画)
5.0
映画史上に残る狂気の傑作。
ナポレオンフィッシュが串刺しになっているOPから漂う狂気の気配、この時点で只者ではない映画であることは想像に容易い。
ストーリー自体はものすごく簡単だが、「間」を限界まで生かした演出は圧倒的。
序盤の脅迫相手を海に何回も沈めるシーンは、子供がおもちゃで遊ぶような無邪気と狂気両方を有した名シーンだ。
人が死んでも何事も無かったかのように淡々と処理し、無常にも時は進んでいく。特に冒頭の人間性の欠如は顕著だ。
中盤の続々と仲間が死んでいき、暇を持て余したヤクザが子供のように無邪気に遊ぶ「ヤクザの夏休み」シーンからようやく人間性を獲得しかけるが、そんな「夏休み」も仲間の死を持って終わってしまう。
終盤の銃撃シーンはかなり印象的だ。暗闇の中銃から発するフラッシュだけが写り、棒立ちで銃を連射する。こんな発想思いついたとしても絶対にほかの監督はやらないだろう。シュールかつ暗明を上手く使った名シーンだ。

主人公が最後にとった行動はまさしく北野武自身当時の願望を強く反映しており、かなりショッキングだ。

最初から最後まで、前編狂気のに包まれた大傑作。