しいたけさん

ソナチネのしいたけさんのネタバレレビュー・内容・結末

ソナチネ(1993年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

特筆すべきストーリーもなく、ただヤクザが殺し合うだけの映画。
にも関わらずこの作品が傑作なのは、独特の乾いた感性で死と生のコントラストを鮮烈に描写しているからだ。

一般的なイメージにおいて死を生と対置する時、それは昼に対する夜であり、日常に対する非日常である。しかしこの作品における死は、長閑な白昼それ自体が突然真っ白に弾け散る、そうした何かである。明るい生が暗い死に塗りつぶされるのではなく、内側から唐突に消し飛んでしまうような、そんなイメージだ。
だから死と生は極めて近い場所で隣り合っているのだが、しかしその間には明確な断絶がある。この作品における突然の暴力はまさにそうした断絶そのものとして時間の流れの中に打ち込まれる。

この映画のDVDのパッケージは、薄暗い空を背景に魚がモリで突かれたイメージになっているが、晴れ渡った海岸でたけしがこめかみを撃ち抜くイメージの方が作品の本質をよく示している。
あと、女優さんには悪いのだが、彼女の存在はこの作品においては蛇足だと思う。