さっ

ハワイ・マレー沖海戦のさっのレビュー・感想・評価

ハワイ・マレー沖海戦(1942年製作の映画)
3.9
純粋な芸術作品でないことは承知で。

前半の友田義一君の成長物語はテンポもよく面白かった。実際に予科練で撮影しているのだと思うが、あの迫力(皆の逞しい肉体よ!)はやはり「本物」ならでは。映画だからかもしれないけど、過酷な訓練の一つ一つをやり抜く度に「よくやった!」「頑張った!」と教官が誉めてくれるのが嬉しい。訓練の相撲中、足掛け技で勝った友田君を「シャバの相撲とは訳が違う!力で押し出さなくては意味がない!」と山下分隊長が叱責したのには笑ってしまったが……無謀な精神論が抑圧でなく応援のように聞こえてくるのがちょっと怖い。

一家最後の男手だった義一を軍に取られた母が「あの子はもううちの子じゃないと思ってますから」と話すのは、戦意高揚映画にしてはシビアだと最初感じたのだが、後の文脈から察するに息子の命を国に捧げる覚悟を決めるという「美徳」の実践を意味していたのか?

天皇=大元帥のことを口にする時の枕詞「畏くも」、それに合わせて皆が一斉に背筋を伸ばしたり、立花が白亜の聖堂の如き海軍兵学校教育参考館(?)の東郷平八郎遺髪に頭を垂れたりする描写は、当時の風俗というか価値観を垣間見る感覚でふーんと思ったくらいだった。

で、友田君いざ真珠湾に出撃という段になると、肝心の彼が全然登場しなくなってしまって(一応武勲をたてるシーンはあるが)折角の物語が回収されず、何だか撮影や編集も漫然とした感じで残念。

とはいえ、有名な真珠湾攻撃の円谷特撮は素晴らしい。高空の飛行機からの視点を再現しゆっくり移動する俯瞰のカメラワーク、リアルな黒煙、実際の航空機の映像との巧みな組み合わせなどなど。

最後、マレー沖海戦が取って付けたように描かれる構成が雑すぎ。

原節子がきれい。
さっ

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