Jeffrey

天井桟敷の人々のJeffreyのレビュー・感想・評価

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)
3.5
「天井桟敷の人々」

本作は1945年に190分の上映時間で世界的に有名になったフランス映画史上に残る名作と言われたマルセル・カルネ監督による第一幕「犯罪大通り」と第二幕「白い男」の2幕構成になった傑作で、ベネチア国際映画祭で特別賞受賞し、キネマ旬報第3位になり、各国の映画評論家から高い評価を受けた本作が、このたび国内で初BD化され購入して久々に鑑賞したが素晴らしいの一言だ。ATGでも活躍した寺山修司が率いる劇団もこの作品のタイトルをもじっている。確か彼が青森の映画館で本作を見て感銘を受けそのネーミングをつけたとエッセイで対談、語っていたことを記憶している。

さて物語は(第1部、犯罪大通り) 1840年代、劇場が立ち並ぶパリの犯罪大通り。パントマイム師のバチストは、女芸人ガランスを偶然助けたことから、彼女に恋心を抱く。若手俳優ルメートルや、犯罪詩人ラスネールも彼女に惹かれていたが、ガランスは誰のものにもならない。そこにガランスに魅せられたもう1人の男、富豪のモントレー伯爵が現れ…。(第二部、白い男)数年後。座長の娘ナタリーとの間に一児もうけたバチストは、フュナンビュル座の看板俳優として舞台に立つ日々を送っていた。そんなバチストを毎夜お忍びで見に来る1人の女性が。

それは、伯爵と一緒になったガランスだった。ガランスが訪れていることを聞いたバチストは、たまらず舞台を抜け出すが…と簡単に説明するとこんな感じで、台詞、美術、衣装、音楽、そのどれもが美しい、悲しい愛の物語と大絶賛され、映画史に輝く、詩的リアリズムの傑作と言われている本作を4K修復で久々に見たが文句のつけどころがないほどに映像が綺麗だった。本作は新たなルネッサンスの精神を再現することで、終戦直後の観客を強く励ました作品とも言える。パントマイムから想像力の自由を取り戻そうとするロマン派芸術が解き放たれた瞬間がある。非常に魅力的な1本である。
Jeffrey

Jeffrey