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天井桟敷の人々の映画初心者のレビュー・感想・評価

天井桟敷の人々(1945年製作の映画)
3.8
今でも面白く感じるタイプの古典的名作。フランス映画の代表作、そして手塚治虫のオールタイムベスト作品。かなり長い作品ですが綺麗に2部構成に分かれているため見やすい。この作品の魅力は登場人物とそのセリフ。

「天井桟敷(てんじょうさじき)の人々」。タイトルの読み仮名から意味まで難易度高め。舞台劇における天井近くの一番安い席のことを「天井桟敷」というようです。この難易度高めのタイトルから、少し身構えてしまいますが、内容は分かりやすい恋愛ドラマ。主人公ガランスと彼女に恋する男性たちを描く。

この作品、魅力的な登場人物とセリフ、そしてそれを演じる役者が光った作品に思います。主人公ガランスはどこか上品な陽気さ、彼女に振り回される男性群、そして宿屋の女将といったサブ登場人物まで良く感じました。お話の展開や映像で魅了する作品ではないですが、ぼ~っと見ていてじわじわ面白い作品といった感じでしょうか。

セリフが本当に良い作品ですね。自分が言えば恥ずかしくなるようなものですが、役者が言えば魅力的。特に1部の居酒屋を出て夜道を歩く2人、2部の高級な館でのガランスとフレデリックの会話シーンが良い。1部なら「笑ってなくちゃ生きていけない」、2部なら「時がたっても幸せは色あせないわ」が特に好き。1部のそのセリフからの2部でのガランスの変化も相まって良いセリフです。

第1部も第2部も面白いですが面白さのベクトルは変わる。第1部は成長譚と恋愛劇の、パントマイマーが舞台に上がるようになり、ガランスは色々な人と巡り合い。第2部は1部から数年後、変化してしまったこと、していないことを描きながらもどこか喪失感を抱くガランスを描く。クラナドアフターストーリー的なポジションですね。

映像的に言えば、冒頭とラストの大群衆シーン、エキストラの数が膨大。そして1部終盤のバチストが自分が映る鏡に白色塗料で×印を描くショットが良かった。ただ、言ってしまえばそこぐらいしか映像的な面白さは無かったと思う。

【総評】
古典的名作ながらも今見ても面白い。フランス映画の代表作であり、わかりやすい恋愛劇。登場人物が魅力的でお話の意外な展開や映像美が無くとも楽しめる作品だと思います。

追記:2部序盤に登場した脚本家3人衆面白かったな、リーダー以外のサブ2人が同じセリフを同時に言うコメディ感。映画というより全体的に舞台劇さはありました。
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