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スポンティニアス・コンバッション/人体自然発火のRのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

自宅で。

1989年のアメリカの作品。

監督は「悪魔のいけにえ」のトビー・フーパー。

あらすじ

1955年、1組の若い夫婦は軍によって行われたある実験の実験台になった。それは水爆実験の際、抗放射能ワクチン投与によって、人体の放射能の耐性を上げるものだった。実験は成功、その後夫婦はある男児をもうけるが、その直後、夫婦は突然体から火を吹き出し、焼死してしまった。34年後、大人になった高校教師のサム(ブラッド・ドゥーリフ「デッドウッド 決戦のワイルドダウン」)はある日突然指から火が吹き出し、その日から自然発火現象に苛まれる。

U-NEXTにて、タイトルに惹かれて鑑賞。

お話はあらすじの通り、「スポンティニアス・コンバッション」いわゆる人体自然発火現象を取り扱ったホラー?のような内容となっている。

で、監督は「悪魔のいけにえ」シリーズでお馴染みのトビー・フーパー。この監督の作品はおどろおどろしいイメージがあったんだけど、そういう意味で観る前は次々と人々が燃えるスプラッター的な感じなのかなーと思ったら、全然違った。

まず、冒頭から悲しすぎる。軍の実験によって「核ファミリー」となってしまった夫婦、その後主人公であるサムが生まれるものの、その喜びも束の間、サムを抱いた夫婦は突然発火して、焼死してしまう。死ぬ前の幸福な瞬間が一変、惨事に変わる瞬間が非常に悲劇的。

で、その後スクスクと成長したサムは大人になる。で、それを演じるのがどっかで見たことあるなぁと思ったら「ロード・オブ・ザ ・リング」の「蛇の舌」やんけ!!特徴的な悪役顔で印象に残る俳優さんだったけど、この頃はまだ若々しく、ただあの非常に鋭い目つきは相変わらず。

で、そんなサム、元奥さんとの会食の後くらいから突然指先から火が吹き出し、同時期に彼と関わった人間は次々と焼死してしまう事件が発生してしまう。

肝心の人体発火のシーンに関しては、80年代の終わりということもあり、エフェクト的には荒い火のCGを被せた今観るとお粗末なものなんだけど、それによって瞬時にそれまで生きていた人間が火に包まれ叫声と共に倒れる様はなかなかにショッキング。

で、それに伴い、サムも初めは指先だけだったのが、腕から火が吹き出し、なぜか電話口から話した相手に遠隔攻撃が出来ちゃったり、しまいには「燃えろ」と念ずるだけで相手を燃すことができちゃうパイロキネシス的な能力にまで至る。

で、その結果見た目もだんだんと傷ついていき、最後はまるでモンスターみたいな様相に変わっていってしまうのがまた哀しみを誘う。

そもそも、彼の生い立ち含めて、ずっとかわいそうなんだよなぁ。両親は死に、恋人のリサ(シンシア・ベイン「パンプキンヘッド」)からもらった頭痛薬と言われた薬で人体発火に苛まれて、周りの人々のほとんどは彼の能力に目をつけ、しまいには命までも狙ってくる。その結果、仲の良かった警備員などまで手をかけて、心身共にボロボロになりながら最期は…。

俺は観ていてなんとなくフランケンシュタイン的な感じを受けたんだけど、監督的には特撮のファンだったこともあり、初代「ゴジラ」オマージュだったようで、そう観ると確かに全編に渡って散りばめられる「核」のテーマ性もあり、その哀しい最期を含めて、怪物となってしまったものの悲劇的な物語だった。

ジャンルホラーとして観ると思っていたものと違うけど、トビー・フーパーの作品群の中では新境地であり、異色作だった。
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