YukiSano

20世紀ノスタルジアのYukiSanoのレビュー・感想・評価

20世紀ノスタルジア(1997年製作の映画)
3.1
インディーズ映画の若き天才と言われた原將人監督の商業デビュー作?当時、インディーズでデビューしてから20年近く経ってから、この作品で日本映画新人監督賞を撮っていた。

そして90年代最強アイドル広末涼子デビュー作でもある。

広末と同い年の僕は、当時この作品は「マジで恋する5秒前」のプロモ映画だと勘違いしていた。

この監督は、十代の頃に自分自身を撮り続けた作品で天才と見出だされ、その作品の上映中に自ら演奏しながら歌うということで知られる。

そしたら、そのまんま8ミリビデオで自分を撮り続ける少年が監督作詞作曲の歌を広末と歌いまくるし、ずっと少年のぼやきが延々と垂れ流される。当時の観念的な学生自主映画そのものみたいになっているビデオ作品が、メタ的に35ミリフィルムで納められている。

自分も学生時代に8ミリビデオで自主映画を撮っていたので、見ていて気恥ずかしくて懐かしくて、でもつまんなくて色んな感情が錯綜した。

しかし、つまらなすぎて段々と頭が痺れ、全盛期の広末しか見るべき所が見当たらない気がしていたのに、いつの間にか変な世界観にハマっていく感覚に陥った。

気がつくと世界破滅の5年前くらいの時に広末と自主映画を撮っていたという無かったはずの青春の記憶がインセプションされた気分になってくる。自分が完璧に同世代ということもあるだろうが、あの時代 確かに広末と共に過ごした想い出が蘇り始める。

変な歌と退屈で詩的なボヤキのおかげで脳が疲れ、いつの間にか私は広末とデートした偽の記憶を植え付けられるという新興宗教の洗脳のような状態にさせられた。

何と言う映画体験。こんな不思議な体験はなかなかない。渡辺文樹というトンデモインディーズ映画監督の上映会でも同じような体験をしたが、今回は全盛期の広末という怪物を使ってきたため、甘美な想い出になってしまった。

さすがインディーズ映画の天才の作品である。そんじょそこらのメジャー映画には出せない感覚。

あの頃の20世紀最後のノスタルジーを確かに受け取って、まるで25年後の自分が観るためだけに自分で撮ったような個人的な作品に思えてしまうヘンテコ映画。

誰にもお勧めできないけど、モンスターアイドル広末涼子との想い出デートを楽しみたい人だけが見れば良い。
YukiSano

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