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レクイエム・フォー・ドリームの盆栽のレビュー・感想・評価

4.2
破滅への道を選んでしまった4人


 中毒が引き起こす、人間の破滅を描いたダーレン・アロノフスキー監督の代表作。主に薬物を破滅への引き金として設定し、自己顕示欲、成功、夢の追求など、現代社会の暗部を描いた鋭い作品。ちょっとした選択のミスで取り返しのつかない状況に陥る様を、救いなく、とことん絶望的に映す。気分がアガっている時に観るような映画でもないですし、気分が下がってる時に観たらさらに落ち込むこと確定の厭な映画が本作です。

 物語は、4人の登場人物がそれぞれの欲望や夢を追い求める中で、次第に自己破滅へと向かっていく姿を追っています。アロノフスキー監督は、映像や音楽を巧みに使いながら、登場人物たちの内面の葛藤や苦悩を繊細に描写し、観客に強烈な印象を残します。特に薬物を摂取する時に異常なほど多用するマクロショットには眩暈がする。あまりにも刺激的な映像が登場人物たちの主観と融合されるから心が錯乱するばかり。教育的ではないが、反面教師映画ではある不条理さ。

 破滅に向かうまでのプロセスを中盤まで描き、最終的な破滅までの過程を終盤でゆっくり描くのも決して気持ちの良いものではない。気分を害する映像を延々と見せられる数十分間はもう経験したくない。「嫌悪感」が本作の魅力。

 「薬物はよくない」という分かりきった常識を包み隠さず、観客再度理解させるまで描いた本作。他人事でなく、自分事として捉えると勿論ただの不幸。しかしその不幸を本作は映画的に面白く演出しているから恐ろしい。結論、映画は怖い。

2024.3.13 初鑑賞
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