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眠狂四郎 無頼剣のkojikojiのレビュー・感想・評価

眠狂四郎 無頼剣(1966年製作の映画)
3.5
愛染「やると行ったら必ずやる。
見ろ!見ろ!燃え盛るあの火の手を。
風が変われば、本丸も西の丸も焼きたてること必定だ。」
狂四郎「城も焼け!大名屋敷、札差、焼きたくば焼け!ただ辻褄もなく、焼き立てられて住む家なく、不運な80万庶民をなんとするのだ!主義が主張がどうであろうとこの暴挙許されんぞ。」
愛染「よかろう、お主となら。行くぞ!」

この映画の最大の見せ場、天知茂演ずる大塩平八郎の残党の頭目愛染と狂四郎の屋根の上での一騎討ちのセリフ。

 なのだが、どうも様子が違う。狂四郎はいつから、江戸80万庶民の味方になったのだろう。おまけに熱い。

 この「無頼剣」にもう一つ気になるセリフがある。
 今回唯一のヒロイン藤村志保演ずる勝美に魔の手が襲い掛かろうとした時のセリフだ。
狂四郎「俺はな、産みの母親は顔さえ知らんが、女の腹から生まれてきたに相違ないのだ。お袋様と同じ女性(にょしょう)に理不尽を働く輩は、理非曲直(りひきょくちょく)を問わんぞ」

何か、違う。いつものニヒリストの狂四郎ではない。

#1930
1966年 大映 狂四郎第8作
監督は三隅研次(3本目)
脚本は伊藤大輔
 シリーズ第1作からずっとひとりで脚本を手掛けてきた星川清司に代わり、本作は時代劇の巨匠・伊藤大輔がオリジナル脚本を執筆。他には雷蔵の「薄桜記」がある。
原作は柴田錬三郎

 江戸有数の油問屋・弥彦屋に愛染(天知茂)と名乗る浪人が押し入り、1枚の図面を持って立ち去る事件が発生した。
その図面は天然油を精製する方法を示したもの。本来これを研究した大塩父子は、それを利用して貧民救済する予定が弥彦屋の裏切りのせいで挫折していたのだった。大塩の残党の頭目愛染はその復讐で、江戸中を火の海にしようとする。眠狂四郎はこれを阻止しょうと立ち上がる。


 脚本も変わり、監督は三隅研次だから一筋縄では行かない。監督が違えばこうも変わるのか。私はどうも三隅研次の狂四郎は合わない。
円月殺法も当然ストロボなし。
色仕掛けも、小気味いい狂四郎の捨て台詞もなく、あるのは熱く燃える狂四郎のみ。

 一番の見せ所は天知茂との闘いだが、ともに円月殺法で闘う。
 過去に逆円月殺法で闘う敵はいたが、まともに同じ円月殺法は初めてだ。
美しいか?と聞かれたら、そんなことにはならないと、狂四郎風に答えるだろう。
あまりスッキリはしないと。

2023.08.01視聴363
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