櫻イミト

泥中の薔薇の櫻イミトのレビュー・感想・評価

泥中の薔薇(1919年製作の映画)
4.2
後に黄金タッグとなるトッド・ブラウニング監督とロン・チェイニーが初めて出会った作品。 サイレント時代のブラウニング監督のミューズ、プリシラ・ディーン主演の犯罪メロドラマ。原題「The Wicked Darling(邪悪な彼女)」。別邦題「気儘な女」。

スラム街の娘メアリー(プリシラ・ディーン)はスリのコナーズ(ロン・チェイニー)、横流し質屋のピート爺さんの元で泥棒に手を染めながら暮らしていた。その頃、事業に失敗し破産したケントは婚約者アデルから別れを告げられていた。帰りすがら彼女がネックレスを落としたのを見つけたメアリーはたちまちそれを拾い近くの屋敷に逃げ込んだ。そこはケントの家で、お互い事情を知らない二人は仲良くなる。やがてケントを愛し始めたメアリーは泥棒家業から足を洗い隣の食堂で働き始めるが。。。

ずっと観たかった一本。「散りゆく花」(1919)やドイツでは「カリガリ博士」(1919)が作られた年に、ブラウニング監督とチェイニーが本作のようなダーク・エンターテイメントをモノにしていたことが個人的には感慨深い。

「嘆きの天使」(1930)で描写されるような退廃的な裏街を舞台に、最下層の娘の純情物語が展開する。ヒロインを演じたプリシラ・ディーンは初めて見たが、同時代の若手女優と比べて目力が強く好印象。どこか全盛期のウィノナ・ライダーを連想させる。そして更生の道を阻むのが悪役モードのチェイニーで完璧な役作りは流石。ラストはメアリーの力持ちな食堂の店長(元プロレスラーの怪優カラ・パシャ)が大暴れして大団円。エピローグがスラム街とは正反対の牧場ロケーションなのが多幸感を一気に高めていた。

ブラウニング監督とチェイニーのタッグはずっと大好きなので、今回は自分の趣味嗜好の再確認の機会になった。

※ブラウニング監督×プリシラ・ディーン全9本
(▼はロストフィルム)
1918 どっちの女(Which Woman)▼
1918 真鍮の美女(The Brazen Beauty)▼
1919 泥中の薔薇(The Witcked Darling)
1919 優雅な泥棒(Exquisite Thief)▼11分のみ
1920 スタンブールの処女(Virgin of Stamboul)
1921 法の外(Outside the Law)
1922 二国旗の下(Under Two Flags) 
1923 妖雲渦巻(Drifting:漂流)
1923 白虎(White Tiger)
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