イチロヲ

巨人と玩具のイチロヲのレビュー・感想・評価

巨人と玩具(1958年製作の映画)
4.5
業績向上に腐心する菓子メーカーの若手社員(川口浩)が、貧困層のフーテン娘(野添ひとみ)を広告モデルに起用する。高度経済成長時代の明暗を描いている、ヒューマン・コメディ。開高健の同名小説を原作に取っている。

社会の歯車になっている労働者(=機械人間)と貧困層の娘(=非機械人間)の接触を描いていく作風。表面上ではシンデレラ・ストーリーなのだが、「本当にシンデレラと言えるのだろうか?」という余韻を残す。まごうことなき、増村流女性映画。

50年代末期の原風景とメンタリティを同時代性豊かに切り取っているため、貴重映像の連続にワクワクさせられる。とりわけ、好景気を実感することができない、貧困層の描写に絶対普遍を禁じ得ない。

鑑賞者に汲み取らせるべきテーマを台詞でペラペラと喋ってしまうが、今現在と地続きになっている問題提起がすでに発せられているため、強大な訴求力を覚える。資料的価値を見いだすべき作品。
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