隠れた良作。
本作は怪奇、サスペンス、そしてミステリ的な立ち位置にあるけど、ある意味物語の第三者的な立ち位置にある六助とやん八のコンビが出るシーンはトンチキなのでコミカルな部分もあり楽しめる(浮いてるけど)。特に雑な祈祷シーンからのトンチキ度は見所。
後半までの間は結構真面目な一人の奇っ怪な男の正体のサスペンスミステリを展開していたのに、いきなりあんなトンチキ見せられたらからビックリしてしまった。

さて、『幽霊小判』は怪奇サスペンスミステリで一人の死んだはずの庄吉を名乗り特徴が瓜二つの男が、妻のおふじのまえに現れる。
最初はおふじが気を触れていると言われることがあり、虚構と現実を入り混じった話だと思ったが、予想はそうは一筋縄で行かない。
物語が進むに連れて謎が謎を呼ぶような展開、そして本作が"不明確さ"を描いてたからこその終盤の展開は見事に想像できなかった。

ただもちろんサスペンスミステリなのもあるが一方で、"庄吉名乗る男"の存在の不明確さ故の怪奇もあるが、
あるシーンでキリキリと耳が痛くなるような音楽や、所々でだいたい15°くらい斜めの映像の構図で不穏を煽るといったような演出は王道ながらも本作の怪奇的な雰囲気とマッチしていて面白かったです。

井上昭の監督デビュー作。ミステリー仕立て。配役は地味だが、ラストに駕籠かき役で雷蔵がワンショット出演。